「真に申し訳ござりませぬ!!」
昼休み、バァーンと大きな音をたててドアが開いたかと思えば、Bダッシュ並みの速さで破廉恥さんが机やイスを吹き飛ばしながら私の前にスライディング土下座してきた。
いきなりの事に対応できず「えっ…えっ!?」と中庭に行こうと立ち上がっていた私はただ、立ち尽くすばかりだ
(…私、男の人に土下座させるようなこと…なんかしたっけ…)
「あ…あの、顔をあげてください…というより立って頂けませんか…?」
とりあえずこの体制はいかがなものかと思い、そう言うと彼は顔をあげて、うるうるっとした仔犬のような瞳でこちらを見てきた。
いやいやいやいや、キュンとしてる場合じゃない。なにせ、教室、廊下中の好奇な視線がこちらをなんだなんだと見ているのだ
そんな状態で理由なんて私に聞ける訳ないし、いや、普通の一般的な平凡男子なら聞けたけど、なにせ相手は学園の有名人だ
一刻も早くこの場から逃げたい逃げたい逃げ出したい
光の速さで考えた結果、強行突破という結論に至った
「あの、ほんと何のことか全くわかんないんですけど、全然平気なんで気にしないで下さい!それじゃ、用事あるんで!」
それじゃあ!!と片手をあげて去ろうとしたら『ガシッ』と腕を掴まれた。
「…え?」
「なんと心の広き御方でござろう!この幸村感動いたしましたぁ!ぅぉおやかたさばぁ!」
叫んだあと空いた方の腕で顔を押さえ男泣きされた。
えっ…?私用事あるって言ったよね?普通そしたら見逃してくれるよね?ね?泣かれてる場合じゃないよね?だ、誰か助けてくれー。
…とりあえず、この腕離してくれないかな…視線が痛いから…
引いてみてもビクともしないし、気付いてもいないようだ。
「旦那ー、謝れたのー?」
どうしようなんて困っていると猿飛がヒョコッと顔を出した。もう藁でも猿でもいいから縋りたい気分…。
彼は現状を見るや否やアハー…と苦笑いした
「…これ、どうにかしてもらえないですかね?」
「・・・じゃあ下の名前で呼んでくれたら助けてあげようかな♪」
・・・はい?
沢山のギャラリーに囲まれた私の機嫌は最高潮に悪くなりかけていた
いや、確かに藁にでも縋りたいとは言ったけどさ…
ニーッコリ笑うこいつに手を借りてしまっていいのか、この条件を飲んだらもう戻れないんじゃないか…?
「………け」
「え?なに?」
「……すけ」
「んー?聞こえないなぁ」
「〜〜っ…佐助っ!」
「はい、良くできました♪」
最早知ったことか!これで満足かよっ!と言わんばかりに睨みつけたが効果は無かった
「ハイハイ。旦那、腕離してねー名無しちゃん困っちゃってるからねー。旦那ねぇ、さっき破廉恥って言って叫んで走っていった後、誤解だって竜の旦那…あ、伊達政宗ね、に聞かされてね。謝りに行くってきかなくて」
腕を離しつつ、説明された
(そんなこと…どうでもいいのに…。どうしてくれるんですかっ!この状況!!)
(む?この状況とは?)
(……アハー)
090216
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