「あぁっ!んっ…んあっ…!」

「っ…、」

「ひゃぁっ、あぁっ!んんっ!」

「っ、黙れよ、」


女の口を手の平で塞いで黙らせる。

イライラする。

目の前で喘ぐ女にも、思い通りにいかないあいつにも。

今までこれで満足してたのに。

今までこうしてきたじゃねェか。


欲しいと思ったものはどんな手ェ使ってだって手に入れた。それ同様に女なんか掃いて捨てる程に寄ってきた。

そしていらねぇもんは、迷いなく切り捨ててきた。

その過程に感情なんて存在しないし、そんなもん邪魔なだけだ。


なのに、名前が関わる事全てにイライラする。

今だって、脳裏に浮かび上がるのはあいつだけ。


こうして手の届く女を引き寄せて抱いたって、いつの間にか女を通して名前を見ていた。

服従させて、求めてきて。

名前にさせたい理想が現実になっているのに、俺は全く満たされない。

気付けば俺は、いつの間にかこんなにもあいつだけを求めていたんだ。


俺を迷わせるのも、満たすのも名前だけだ。


だからこそ、名前を想う土方が許せなかったんだ。

俺に纏わり付く女ならいくらでもやってやる。


だけど、名前だけは駄目だ。

名前だけは、絶対に譲れねェ。


なんて言葉が頭を過ぎって、気付いた時には土方の胸倉を掴んでいた。



「ンッ…、んあぁあっ!」

「っ、」



黙れと告げていたにも関わらず、ひとしきり喘いだ女は呆気なくも果てた。

それと同時に脱ぎ捨てた自分の服を掴んで立ち上がる。


「高、杉さん…?」

「気持ち悪ィ、触んな。」


自分の身体が、すごく気持ち悪い。

名前に出会う前はこんな感覚なんて知らなかった。

好きでもねェ女抱いて、むしゃくしゃして一人虚しくなるなんて。



「私っ、高杉さんがまた呼んでくれるの、待ってますから…!」

「……。」

「必要になったら、呼んでくださいッ…!」



扉に手をかけた俺に必死に叫ぶ声が、やけに耳に障る。

こいつは俺に、一体何を求めてるんだろうか?

地位か?金か?俺自身の容姿だって悪くねェ。

俺はこいつに、何かをしてやるか?


「……。」


答えはNOだ。

俺は目の前の女に、何もしてやる気にならない。

頭の片隅で、"あいつなら"なんて考えている俺は、もう侵されているのかもしれない。


馬鹿馬鹿しい思考を頭から拭い去って、叫びつづける女を無視して扉の外に出た。


 
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