晋助達が出て行った扉が閉まれば


静寂としていた空気は次第に嘘のように騒ぎだした。







私は俯いて、力一杯に手の平を握り締めた。




あんなやつ、大嫌いだ。




いつも勝手で人を振り回すし、迷惑だって省みないような非常識男。


私は最近の出来事に忘れていたんだ。


晋助がそういう男だって事。


本当に馬鹿みたい。結局、仲良くなったと距離を縮めたなんて思い込んでいたのは私だけで、晋助にとっての私は"なんとも思っていない"存在。


つまりは他人って事だ。



心の中にグルグル渦巻く感情が気持ち悪くて、今にも吐きそうなくらい。

それと同時に、胸がすごく痛い気がした。




「名前。」


『っ!』



土方さんに肩を叩かれて意識が現実に戻る。


顔を上げれば、頬を腫らせた土方さんの顔が目にうつった。



『大丈夫ですか?』


「こんくらいなんともねェ。」


土方さんは腫れた頬を一度袖で拭って、何事もなかったかのように私を見た。



『…一体何があったんですか?』



殴り合いになる、そもそものきっかけはなんだったんだろう?


私が詰め寄れば土方さんは私から視線を逸らせた。

そして私の頭をポンポンと撫でて悲しそうに笑った。




「何でもねぇから、お前は気にすんな。」




そう告げると土方さんは私の横を通り過ぎてそのままVIPルームから出て行ってしまった。



『……そんなこと言われたって気になるに決まってるじゃないですか。』



晋助と同様に消えて行った背中にポツリと言葉を吐き出した。




本当に、どうしてこんなことになっちゃったの?


私のせいでこんなことになってしまったのは一目瞭然なのに。


なんで、殴り合いなんて…



私は一体、どうしたらいい?



ぐるぐると繰り返す質問に、出口の見えない答え。考えれば考えるほどに顔が俯いていく。


私のまわりには誰もいない。

私の事なんて誰も気にしない。



一人だけ取り残された気になって、関係ないようにガンガンと鳴り響く騒音がやたらと耳に障る。

そして私の心は遠い昔に閉まっていたはずの気持ちがよみがえり暗い気分になった。






どうして、こうやっていつも私は取り残されてしまうんだろう。




また、何も理解しないうちに失ってしまうのだろうか。










「名前ちゃんどした?んな泣きそうな顔して。」


『っ!!』




現実に引き戻すように突然呼ばれた名前に、おもわず身体が驚く。


ふと顔を上げれば、そこには銀時さんがいた。


 
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