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なんで?
どうして?
そんな言葉が頭をぐるぐると回って私はただ彼を見上げることしかできなかったんだ。
「高杉さん、大丈夫ですか?」
訳が分からなくて混乱する私の頭に響いたのは女の人の声。
声の元を辿れば、声の主はいつも晋助の隣にいる綺麗な女の人。
彼女は晋助に寄り添って土方さんを庇う私を睨みつけた。だけど不自然に口元は笑っている。
それはまるで私と晋助が争っているのを喜んでいるように。
私を目の前で見下す女の人に食ってかかりたい気持ちを抑えて、私は掌を握りしめた。
落ち着け、落ち着け私。
『なんで、こんなことするの?』
血の滲む土方さんの頬を一度見てから晋助に視界を戻す。
別に私は晋助を責めてるんじゃない。
ただ、どうしてこんなことになってしまったのか聞きたいだけ。
「テメェ、その手を離しやがれ。」
『は?』
あろうことか晋助は私の質問には答えずに関係のない言葉を発した。
「そいつから今すぐ離れろ。」
怪訝そうに見上げた私に晋助は更に続けた。
意味が分からない。
一体、何なの?
私の聞いてることは無視して、自分の言いたい事だけ言うなんて。
今だに睨みつけてくる晋助に私はだんだんと腹が立ってきた。
なんで、私が土方さんから離れなくちゃいけないの?
なんで、晋助は私の話を聞いてくれないの?
目の前で私を睨みつける晋助が、私にはなんだか知らない人のように見えてしまっていた。
馬鹿みたい。
晋助が睨んでくるのも、隣の女の人が笑っているのも。
馬鹿みたい。
こんな晋助にイライラしてる自分も。
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