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「この写真の女が高杉の女か。」
「はい。クラブで話す姿と高杉がこの女の家から出てくるのを確認してます。」
「確定、だな。」
「高杉の奴この女に随分といれ込んでるみてェですよ。」
「へェ、そいつぁ好都合じゃねぇか。今日、計画を実行する。」
「はい!!」
私の知らないところでこんな会話がされていたなんて。
「お待たせしましった!!」
大音量の音楽の中、頼まれていたドリンクを勢いよくテーブルに置く。
目の前には目付きの悪い男と頭フワフワのふざけた男の二人。
そして両脇にはやっぱり綺麗なお姉様方。
「今日は随分と荒れてんじゃねェか。」
「何?そんなに荒れちゃって名前ちゃん今日アレの日?」
私の態度にも動じずに二人は座ったまま私を見上げる。
「あのねぇ!毎回毎回毎回毎回毎回ドリンク運ぶのに私を指名するの辞めてもらえませんか!?ここはキャバクラじゃねぇんだっつの!!」
イライラするのも当たり前。
うまく店長を丸め込んだのか、VIPに運ぶドリンクを嬉しそうに毎回私に手渡す店長。
あんな顔されちゃ断れないに決まってんじゃん!
と言うかドリンク頼まれるたびにここに運んでちゃ本当キリがない。
「名前ちゃん今"毎回"って何回言った?
「…6回じゃねェ?」
聞けよ人の話。
つーか言ったの5回だし。
『とにかく!!今後一切やめてくださいね!っていうか今日は私これで上がりですから店長に言っても無駄ですからね!』
このドリンクを運び終われば今日のバイトは終わりの時刻だった。
こんな奴ら相手にしてないで早く帰りたいのが本音。
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