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流れていく景色に、懐かしい町並み。
両親のお墓参り以外では足を運ばなくなった故郷。
しかしここは何一つ変わっていない。
『ここが、両親のお墓なの。』
振り替えって晋助を見上げれば、私の後ろのお墓を真っ直ぐにを見つめた晋助。
昨日の夜、帰郷のために準備をしていた私に晋助は意外にも自分もお墓参りに行くと声をかけた。
一緒に来てくれるならば両親も喜ぶだろうと私は二つ返事で承諾した。
目の前のお墓を見れば、足を運べなかった期間の汚れはしっかりとついていて。
キレイにするために私はゆっくりと手を動かした。
『晋助、』
「…どうした?」
『あのね……』
晋助には、話しておこうか。
少し昔話でもしようかと、ぽつりぽつりと話し出す私に、晋助はちゃんと耳を傾けてくれた。
私達家族は、ごく一般家庭の、それはもう幸せな家族だった。
毎日一緒にご飯を食べて、休みの日にはみんな揃って遊びに行く家族。
私は両親が大好きで大好きで、いつでも二人のそばを離れないような甘ったれた子供だった。
両親もそんな私をいつも可愛がってくれた。
そんな幸せを壊す音は、音もなく私達を襲った。
それが、私が小学生の時。
父親が突然、友人の借金の保証人になった。
父親は馬鹿がつくくらいお人よしで保証人のハンコ押してヘラヘラ笑ってるような父親。
母親はそんな父を見て、困っていたなら仕方ないわねって笑う人だった。
私の両親は付き合いたてのカップルのように仲がよくて常に傍にいた。
そしてある日、お決まりのように借金をした当人が消えた。
返金の返済は当たり前に保証人である私の父親。
…それからは、まるで世界が変わった。
両親は朝も昼も夜も必死で働いた。
何年も、何年も。
幸せだったみんなでのご飯もなくなって、私は朝も夜も一人ぼっちだった。
その数年後に両親共々病気が発覚。
両親は"こんな時でさえ二人一緒だね"って笑ってた。
それが私が高校生のとき。
それからは、寝る間も惜しんで両親の代わりに私が働いた。
高校生の私は恋だの友情だのって周りがうらやましかった。
……私は借金でいつも働いているのにって。
そうしたら、いつの間にか両親に冷たく当たるようになってて。
顔も見ずに、返事もろくにせずの日々が続いた。
だけどそんな私を見て両親は悲しそうに笑うだけ。
そんな日が続いて
ある日突然両親が死んだんだ。
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