『さて、どうしようか。』


意外にも早く目的が済んだから、思った以上に時間が余ってしまった。


なんか行くとこでもないかと、何気なく周りを見渡してみる。


『し、晋助!晋助!』

「な、なんだよ急に。」

『あれ!あそこ行こうよ!』



私が指差したのは、少し大きめのペットショップ。


チラチラ見える愛らしい顔に私はテンションが上がりまくる。

『うわっ!可愛いっ!』


目があったのは触れるように出してある小さな子犬。


「抱っこしてみますか?」

『え!良いんですか!?』


近くにいた店員さんに進められて目の前の愛らしい子犬ちゃんを何気なく抱き上げてみる。



うわなんだこの可愛さ!

小さいしモフモフしてるし良い子だし!


『ねぇ晋助!ってあれ…?』


この最上級の可愛さを晋助にもおがませてやろう(むしろこの可愛いげを晋助も見習えばいい)と思い振り返ったが、そこには晋助の姿はなかった。


もったいないことに可愛らしい犬をまったく見ておらず、少し離れたところでなにやら商品を見ながら女性の店員さんと真剣に話し合っている。


私は抱いていた犬を下ろして晋助に近づいた。



『何してんの?』


晋助たちの前にあったのは、犬や猫が使うたくさんの首輪。



「お前、赤とオレンジどっちがいい?…いや、紫も捨てがてェな…。」


『わ、私はこの中ならオレンジが好きだけど…。』


あれー?晋助って犬なんて買ってないよね?

っていうかなんで私の好みを聞くんですか?



晋助は真剣な顔で首輪と私を何度も見比べている。


え?なんで首輪と私を見比べるんですか?


まさか私が着けるわけじゃあるまいしねぇ……




「ん、これならお前にも似合うだろ。」

『……。』

「……よし、買っていくか。」

『やったぁ!私このオレンジ似合うかな?……ってやるわけないでしょうがァァアア!この変態!』


予想通りの展開に思わずノリ突っ込みしちゃったよ!

え、何さっきのおじいちゃん的ノリで買おうとしちゃってんの!?


っていうかそれ犬用だから!いや、人間用でもつけたくないけどさ!


『いくら居候の身だからってさすがに首輪はしないからね!』

「チッ!」


おい、店員さんの前でこんな辱しめを受けて更にそんな盛大に舌打ちされる私の身にもなってくれ。


「絶対ェ似合うのに。」

『嬉しくない!それ全然嬉しくないからね!』


犬用の首輪が似合うって言われて嬉しい奴なんているか!

っていうか店員さんも顔赤らめて頷かないで下さい!


『もう行くよ!』

「……。」


いやいや!そんな顔してもダメだからね!


私は粘る晋助の腕をつかんで無理やり歩き出してペットショップから脱出した。


つ、疲れる……!!



 
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