私たち二人がやってきたのは、最近できた大型デパート。


晋助は地味だ普通だと不満そうだったけど、今回は庶民的にいくと決めたのでそこは譲らなかった。


『今日は普通に!安く!庶民的にいくの!』


なんて晋助に張り切って言えば鼻で笑われたけど。


悔しい……がしかし!晋助に合わせてお高いところに行ったら破産しかねないから今回は我慢してやろう。




『お、あったあった!』


私が見つけたのは日用品雑貨のお店。


色とりどりの食器などのたくさんの品物。


ここが本来の私の目的地だったりする。


『晋助の家って料理道具少なすぎだよね。』


っていうか料理道具もお皿も何もかも少なすぎる。


あれじゃあ作りたくても作れないものが多いもん。


「俺は料理は作らねェ。」

『なんでそんな偉そうなのよ。』


キッチンは素晴らしいのに道具がないんじゃやり甲斐がないって話だよ。


「ねェとお前は不便か?」


料理道具を手に取りながら、晋助がこちらを向いてきた。


『あれば助かるけど…。』

「……よし、買っていくか。」

『うん、買った方がいいよ。』


これで誰が来ても作れるだろうし。


…っていうか今まで晋助にご飯作ってあげてたお姉さん方はどうやって作っていたんだろうか。


むしろキッチンを使った形跡が見られないのもビックリなところなんだけどね。


「あとは?」

『へ?』

「あとは何が必要なんだ?お前が欲しいと思ったもん全部言えよ。」


首をかしげていた私に晋助が不思議そうな顔で言った。


あとは、うーん……。


『あとは、お皿とかあれば良いけど。』

「……よし、買っていくか。」


………なんか、孫に買い与えるおじいちゃんみたいに見えてきたんですが。


『う、うん。あれば便利なんじゃないかな?』


なんてそんなこと絶対に口が裂けても言えないんだけどもね。



結局、いつの間にか晋助にあれはこれはと聞かれ続けていろんな物を買ってしまった。


…晋助と一緒に来て良かった。


私一人だったら絶対にこんなに買えなかったもん。




 
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