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眩しい位の朝日に、不意に目を覚ました。
枕元の時計を見れば、時刻はいつもの起床予定よりも1時間も早い。
…どうやら俺は昨日、いつの間にか寝ていたようだ。
確かに名前と話していたはずなんだが、寝る前の記憶が薄れている。
それほどまでに疲れてたのか、なんて自分のことをまるで他人事の様に考えていた。
早く目が覚めた割にはいつもよりもやけに寝起きが良い。
もう眠くねェし、水でも飲もうか。
俺は布団から抜け出そうと動き出した。
のだけど、
起き上がろうとした俺の手を引くクンッとした感覚。
一体なんだと振り替えれば、そこには繋がれた名前の手。
あぁ、そうか。
こいつがいたからよく眠れたのか。
離れようと思っていた身体を戻し、繋がれた手を更に強く握りしめた。
今思い返せば、夢を見た気がする。
って言っても曖昧であんま覚えちゃいねェけど。
夢ん中で、名前が俺に向かって、大丈夫って笑うんだ。
それだけで俺は馬鹿みてェに安心して、こんなにもスッキリした気分になってんだ。
実を言えば、俺は先日の行為を後悔していた。
無理矢理押さえつけて、あげくに嫌がられて。
絶対ェに根に持ってんだろうなって思ってたし、最悪の場合この家を出ていくかもしれないと思ってた。
そう考えたら仕事もはかどらねェし、十二分にイライラしてた。
…そうか、だからあんなにも疲れてたのか。
だが予想外にも名前は、何もなかったかのように俺の帰りを待っていてくれた。
ソファーに眠る姿を見て、胸に込み上げてくるなんとも言い様のない気持ち。
名前は俺の機嫌を取るような良い顔なんて1度だってしたことない。
嫌なことは嫌って言うし、気に入らねぇ事があれば正面から堂々とぶつかってくるような女だ。
それが新鮮で、俺はまた柄にもなく嬉しくなるんだ。
それとは逆に、俺はいつだって名前を困らせるばかりだ。
なぁ、名前。
一体お前は、何をすれば笑ってくれるんだ?
隣で眠る名前の頬に触れれば、やけに暖かくて。
小さくなって眠る姿に、前髪の隙間から見える額に優しくキスを落とした。
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