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『よし!これで充分か!』
バイトも無事に終わり、私の足はスーパーを出て晋助の家に向かっていた。
食材も買ったし、あとは帰ってご飯を作るだけ。
しばらく歩いてたどり着いた高級マンション。
何度見ても慣れないくらいに大きくて綺麗だと思う。
……っていうか
こんな素晴らしいとこにスーパーの袋ぶら下げてのうのうと入るなんて完全に場違いじゃないか。
すれ違いざまにマンションの中に入って行った"いかにもお金持ち"なオバ様は高級そうな紙袋を抱えていた。
私のこの袋も紙袋とかシャレた入れ物だったら良かったのに…!
なんて思ってもマンションの中に入らない訳にもいかないので、周りの視線にビクビクしながら急いでエレベーターで最上階回まで上がった。
そして目の前に現れたのは重々しい扉。
不慣れな手つきでカードキーを使えば機械音と共に鍵が開いた。
部屋に入れば、それと同時に深いため息が出てくる。
……貧乏慣れし過ぎた私には、このマンションは緊張するし疲れるわ。
『とりあえず、…ご飯作ろう。』
気を取り直して、私は台所に向かった。
『よ、しっと!これで完成!』
一通りのご飯を作って、私は大きなため息をついた。
さすが最新キッチンというか、何もかもが便利過ぎる。
幅は広いし、家電も最新型。
うちの狭い台所に比べたら料理がすごくやりやすかった気がする。
最新過ぎて使い方が分からない機能も多数あったけども。
…まぁそこは晋助が帰ってきたら聞けばいいか。
っていうか、あの人本当に料理しないみたいだな。
使った形跡も、調味料1つすら見当たらない台所。
もしやと思って調味料まで買っといて良かった…!
こんな優秀なキッチンを使わないなんて勿体ないなぁ。
ガチャ
不意に聞こえた音に、玄関まで足を向けた。
『おかえりなさい!お疲れさま!』
「…おう、ただいま。」
帰ってきた晋助をニッコリ笑って迎えれば、少し疲れ顔だった晋助もつられて笑った。
そのまま晋助からカバンと上着をもらって、先に進んだ晋助についていくように私も一緒にリビングに向かった。
「飯は?」
『ちゃんと出来てるよ!』
「風呂は?」
『それもちゃんと出来てるよ!』
晋助から受けとったスーツの上着をかけながら答えていく。
「じゃあ、」
『ん?』
「お前は?」
『うぎゃッ!』
急に後ろから抱きしめられて耳元で囁かれた。
女としてあるまじき叫び声をあげたけど今はそれどころじゃない!
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