『はぁ、』

「どうした?」

『っ!何でもないです!すいません!』


溜息をついた私を心配そうに声をかけてくれた土方さん。


仕事中に溜息なんてついちゃだめじゃん私!


溜息の原因はそう、



あのVIPの日の事。





あのキス事件の日、私はすでに戻っていた店長に体調不良と告げて無理矢理早退した。




あんな気持ちで働くなんて無理だったから。




お偉いさんをビンタしたこともあり次の日はビクビクしながら出勤したけど店長には何も言われなかった。


もしかしたら私がやらかしてしまった事をまだ知らないのかもしれない。



いつばれるのかとヒヤヒヤしながら過ごすことにもなんだか最近疲れてきた。



…私悪くないのに。



「苗字、そろそろ上がりだろ?もう上がっていいよ。」


『あ、はい!お疲れ様でした!』



店長に上がりを告げられ、私はカウンターを後にした。



時刻はちょうど夜中の3時。


私はここ最近連勤だったし今日も早番からだったので3時で上がらせてもらった。



カチャッ


ああ、眠い。眠すぎる。



更衣室の扉を開けて疲れた体でノロノロと帰る準備をすれば眠さは極限だった。


よし、帰る準備もできたしとっとと帰って早く寝よう。



お疲れさまでしたとすれ違うスタッフに告げながら私はクラブを出た。











『…高級そうな車。』



出口の前には豪華な車が一台。



今日はVIPルーム使われてないのにあんな車が停まってるなんて珍しい。



ま、私には関係ないか。




横目で見ながら車の横を歩きだせば誰かが降りてきた。




『っ!!』



いやいやいやいや!!


本当タイミング悪すぎだから私!!


なんであの人がここに!?


絶っっ対見つかりたくないからここは逃げるしかないでしょ!!



『っと、うぎゃ!!』


「俺から逃げようなんざ良い度胸じゃねェか。」



走り出そうとした私の腰を後ろから捕まえてきたのは



あの時のVIPルームにいた眼帯のお偉いさん。






『ちょっ…!人違いですから!!』


「あァ?テメェみたいな奴を見間違えるほど俺は落ちぶれちゃいねェ。」




…テメェみたいな奴ってどんな奴ですか?



あれ?この人初っ端から失礼なんですけどォォオ!!



『な、なにか私に用?』



まさか、あのビンタの仕返し!?



「テメェにはたっぷりと詫びてもらわねぇとなァ。」



えぇ!?詫びるって元々はキスしてきたあんたがいけないんじゃん!!









 
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