即答でそう言った私を、銀時さんは怪訝そうな顔で見詰めてきた。


「ふぅん。名前ちゃんはさ、金とか地位とか欲しいなんて思わないの?」

『…どういう意味ですか?』


「言い方悪いけど、高杉や俺に気に入られれば良い生活できるよ。」


それはつまり、晋助や銀時さんに媚びを売れば良いと言うことなんだろうか。

…そんな事、私には絶対に無理。


『お金があったら、地位があったなら、幸せになれますか?』


きっと私の心はそんなものじゃ何も埋まらなくて。


あたしはそんなものよりも、





そこでハッとした。


…私は一体、何を言おうとしてるんだ。


馬鹿馬鹿しい。




"人の温もりが欲しい"




なんて思うなんて。


寂しい、なんて気持ち

両親を失ったあの時に忘れると誓ったはずなのに。



『銀時さん。』

「ん?」

『私、幸せにしてもらうよりも、幸せにしてあげたいタイプなんです。』


のうのう生きて誰かに幸せにしてもらうんじゃなくて、"名前といて幸せだ"って言ってもらえるように私が幸せにしたいと思うんだ。


『いつか大事な人ができたら、一生かけて愛そうって思うんです。そう思うのに、お金も地位も関係ありません。』


そういった私を銀時さんは目を見開いて驚いていた。

変な奴って思われてもいい。

だって本当にそう思ってるから。


『だから私は、そんなものに興味はないんです。』


そう言って銀時さんを見据えてニッコリと笑えば、銀時さんは困ったように笑った。


「…やっぱ名前ちゃんには敵わねェや。」


再び銀時さんは私を見て笑った。

なんで、そんな安心したように、ひどく嬉しそうに笑うんだろう。


『銀時さ…ってやばい!時間!それじゃあ失礼しますね!』


手元の時計を見れば針は思った以上に時を刻んでいた。

やばいやばい!カウンターには土方さんしかいないから早く戻らなくちゃ!


そして私は銀時さんに背中を向けて急いで立ち去った。


 
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