『それから、ちゃんとご飯くらい食べなさいよ。』


晋助の事だから絶対に食べてなかったはず。

っていうかこんな生活感ない家みたら誰だって分かるか。


「俺は」

『一人じゃ飯食わない、でしょ?』


晋助の言葉を遮れば、分かってんじゃねェかと偉そうに踏ん反り返った。



『だから、一緒に食べるから何がいい?』


あんまり高いのは無理だけど、そう付け足せば晋助は無言で悩みはじめた。


「…前にお前ん家で食ったやつ。」

『…え?あの有り合わせで作ったやつ?』


その問いにコクりと頷いた晋助。

いや、いくら高いのは無理って言ったってあれはちょっと安すぎるんじゃ…。

まぁ晋助それで良いって言うんなら私は助かるけども。



『じゃあ今から買いに行ってくる…って何よ?』


私が立ち上がろうとすれば、晋助は私の腕をガチリと掴んだ。


っていうか、顔が近いんですけど。


「なァ、」

『ん?』

「俺がいなくて、寂しかっただろ?」

『…は?』


突然何を言い出すんだこいつは。

そしてこの最上級にニヤニヤしたこの顔が非常に腹が立つ!


『し、晋助は?』

「…この俺がテメェがいないだけで寂しいわけないだろ。」

『…ふーん。』


うわ、今の言い方すっごい腹立つんですけどー。

ここはお世辞でもいいから寂しかったって言うべきでしょーが!


『……私は、晋助がいなくて、すっごい寂しかった…。』

「っ!」


晋助に寂しそうに呟けば、晋助は目を見開いて驚いた後、急いで私から顔を背けた。


『…もう、晋助とずっと離れたくないよ。』

「……。」


晋助は、顔を背けたまま動かない。

ぶははははっ!ざまあみろ高杉晋助!私の甘えた声は気持ち悪くて鳥肌ものだろ!


『…って晋助、そんなに顔上げられないほど気持ち悪かった?』


ってあ、れ?

いつまでも顔を上げないので覗き込めば、晋助の顔は真っ赤だった。



『ちょっ…!大丈夫!?』

「見んじゃねェ…。」

『ごめん!うそうそッ!全部冗談だから!』

「……は?」


ごめんねー、とケラケラ笑えば晋助がおもむろに私に近付いてきた。


「そうか、そんなに寂しかったんなら構ってやらねぇとなァ。」

『…は?』


ジリジリと近付いてくる晋助に、ジリジリと後方に逃げる私。


『え、私、冗談って…』

「んな事聞こえねぇなァ。」

『ぎゃっ!』


そしてガチリと捕まれた私の腰。

目の前には、晋助の顔。


「会えなかった分、たっぷり構ってやるから覚悟しとけ。」

『…え、遠慮したいです。』




この日、晋助から逃げるために人生で1番体力を使ったのは言うまでもない話。

むやみに、人をからかってはいけないことを学びました。(特に高杉晋助は注意!)


 
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