『…私のせいで死んだなんて言われたら困るし!まぁ、思ったよりも大丈夫みたいで良かった。』


本当の気持ちを吐き出せるわけなんてないから、冗談混じりにごまかして笑った。

良かった、私普通に話せてる。


『…心配、してたよ。』


桂さんも………私も。

余計なお世話かも知れないけど、ちゃんと食べてんのかなとかちゃんと生きてんのかなって心配で。


『桂さんには、ちゃんと連絡してあげてね。あんなに大事に想ってくれる人がいるなんて、…本当に羨ましい。』


晋助が荒れてるって心配していた桂さん。

様子を見てきてほしいって切実にお願いする姿は本当に、大事な人を思うようだったから。




……もし、私がそうなったら誰が心配してくれるのかな?


なんて言葉が頭に浮かんだけれど、すぐさまフルフルと頭を降ってそんな思考を振り払った。


『と、とにかく!私はそろそろ帰るね。もう心配かけちゃダメだよ!次なにかあっても私はもうこないんだから!』


そう吐き出せば、晋助は怪訝そうな顔で私を見た。


『…今日は突然ごめんね。もう来ないから。それから、もう絶対に私から話かけたりしないから安心してね。』


今日、晋助の顔見て分かったんだ。

あぁ、私嫌われてんだって。


『今まで、ありがとうね。晋助といて腹立つこといっぱいあったけど楽しかったよ。で、晋助の事分かってなくてごめん。』


晋助が私の事を他人としか見てないってちゃんと分かってたら、あんな喧嘩にもならなかったのかな。


ちゃんと分かってたら、こんなふうに傷付いたりしなかったのかな。



『…って一人で言いたいこと言ってごめん!それじゃあ私帰るね。』


晋助の様子もみたし、もうここにいる理由もないから帰ろう。


ごまかすように笑って晋助から離れようとした。


『きゃっ!!』


それなのに晋助は私の手を引いてそのまま強く抱きしめた。


『ちょっ…!ど、どうしたの?』


突然抱きしめられたことに驚いて動揺してしまう。


「思ってねェ。」

『な、にが?』


抱きしめられたままで晋助の言葉の意味が解らなくて私は首を傾げた。


「お前の事、何とも思ってねェなんて嘘だ。」


更にギュッと力が込められて、そして少しだけ申し訳なさそうな晋助に、何も言えなくなった。


『…そっ、か。』


良かった。…嫌われてなかったんだ。

ただ漠然とそう思って、安心したように体から力が抜けていくのが自分でも分かる。


「また俺のとなりで、アホみてェに笑えよ。」

『…誰がアホよ、馬鹿。』

晋助は、ずるい。

そんなふうに言われたら、何も言えなくなっちゃうじゃん。


「テメェみたいなバカ女がいねぇと何してもつまんねェんだよ。」


『……。』


「離れるなんて言うな、鈍感女。」


……っていうか、さっきからアホだのバカだの失礼過ぎるんですけど。

私鈍感なんて言われたの人生初めてなんですけど。


『…意地っ張りもいい加減にしろセクハラ男。』



それでも、


一緒にいたいと思ったのは


君が大事な人だから。





そばにいて、笑って


やっぱり

君が1番暖かくて





『ねぇ、』

「あァ?」

『…もう、むやみに乱暴しないで。お願いだから。』


誰も傷付くとこなんてみたくないから。

晋助が傷付いてるとこなんてみたくないから。


「…気ィつける。」



あれ?

随分素直に頷いてくれたなぁ。

でも、分かってくれて良かった。



『…ありがとう。』


私が笑えば、晋助も少しだけ笑っていた。









→ちょっとだけおまけ


 
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