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桂さんの言葉に、ピシリと身体が固まった。
荒れてるって、どういう事?
だって先程の彼女の話を聞く限りでは、晋助は何不自由無く幸せそうだったじゃない。
「名前さん。」
『っ!はい。』
だんまりを決め込む私に桂さんが声をかける。
顔を上げた私とカチリと視線が交われば、桂さんはもう一度口を開いた。
「悪いんだが、高杉の様子を見てきてくれないだろうか?」
『………へ?』
ポツリとつむぎだした桂さんの信じられない言葉に、目を見開いてしまう。
『あの、頼む人間違えていませんか?』
だって晋助には、今の今まで目の前にいたあの綺麗な彼女さんがいるじゃないか。
そんな存在がいるのに、それを差し置いて私なんぞが行ける訳がない。
「あなたで間違っていない。あなたに、高杉の様子を見てきてほしいんだ。」
『い、嫌です!…私が晋助に会う資格なんて、どこにもないんです。』
あの時晋助に突き放された現実は、嘘なんかじゃない。
それに、私が様子を見に行ったところで一体何が出来るって言うんだ。
『なんで、私なんですか?』
「…あいつには、貴女が必要なんだ。」
『……。』
そんなこと言われたって、わかんないよ。
私は一体、どうしたらいい?
「頼む、あなたしか駄目なんだ。」
私が出向いたところで、晋助は私を必要としてくれるのだろうか。
…また、突き放されるかもしれないのに。
『桂さん。』
「む?」
『私、本当の事言うと、晋助に突き放された事が悲しかったんです。』
それが愛情からか友情からかなんてわからないけれど。
ただ、胸が痛いことだけは分かってる。
『晋助に会いに行って、また同じように突き放されちゃうんじゃないかって思うと怖いんです。』
「そんなことっ…!」
『…だから、もしまた傷付いたら、今度はおいしいご飯で慰めてくださいねっ!』
「っ!名前さん…。」
行ってみよう、晋助に会いに。
突き放されるかなんて、行ってみなくちゃわからないよね。
それに、きっと今行かなかったら一生後悔すると思ったんだ。
「うむ。その時は腹一杯までお詫びしてやる。」
桂さんの顔見てたら、逃げちゃ駄目な気がしてきたから。
「…ありがとう、名前さん。」
突撃開始!
君に会いたい
ただそれだけ
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