「いつの時代も、女子はネチネチとしているな。」


晋助の彼女の背中を見送って、大きくため息を着いたお兄さんに、何となく苦笑いで返した。


『あの、お兄さん。』

「む、お兄さんではない。桂だ。」


なにこの決め台詞みたいな言い方。

っていうかお兄さんの名前、桂っていうんだ。

そういえば初めて会った時に同じような事言ってたような気がしなくもないな。

まぁあの時は抜け出すことに必死だったからちゃんと聞いてられなかったけど。

「貴女の頬の原因、先日の拉致事件は風の噂で聞いた。何やら高杉と銀時が暴れ回ったらしいではないか。」

『あぁー…。まぁ、はい。』


暴れ回ったと言うよりは晋助と銀時さんが強すぎて向こうが一方的にやられてた感じ…かな。

でもそのおかげで、これだけの傷ですんだのは間違いじゃない。


っていうかこの間の拉致事件、そんなに有名なのかな…。

…まぁ、晋助達自体が有名だから何かあれば嘘か真か解らない噂ですら回るの早そうだけど。


「どうだ?頬の調子は。」

『も、もう大丈夫です。』


ため息をついた私に、桂さんが問いかけたのは頬の調子。

あれ?この質問さっきの女の人にもされたような…。

今日はこの質問多いなぁ。

裏を返せば心配していただいてるって事なんだろうけど。


『それより何か、私に何か用事ですか?』


私が話題を変えるように口を開けば、そうだった!すっかり忘れていた!、と私に向き直った桂さん。

忘れてたんかい!

もしかして桂さんって見かけに寄らずちょっと抜けてる…?


「…訳は知らぬが、高杉と喧嘩したのであろう?」


不意に真面目な空気になった桂さんに、思わず口を閉じてしまう。

喧嘩、というか何と言うか。


『それがどうしたんですか?』

「あれから、高杉に会っていないのか?」

『…はい、会ってません。』


あれから、晋助とは1度も顔を合わせていないし、晋助も1度もここには来ていない。

なんでかな。

晋助と出会う前に戻ったかのように仕事は順調だし、全てが平穏なのに

私の気持ちはモヤモヤしたまま。


「やはり、そうか。」


難しい顔をする桂さんに、その表情の意図が見えなくておもわず首を傾げてしまう。


『何か、あったんですか?』


私が声をかければ、桂さんは更に難しい顔をして私を見た。

そして、重々しく口を開いた。




「……高杉の奴、誰も手が付けられないほどに荒れてるんだ。」


 
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