2
あのタイミングで現れた名前が見た俺は、完全に悪者だった。
そりゃそうだよな、キレた顔して土方の胸倉掴んでりゃ誰だってそう思う筈だよな。
俺は名前が状況を理解できてないことに、気付いてたんだ。
分かってんだよ、そんなこと。
だけどどうしても、あいつが土方の肩を持ったことが許せなかった。
俺じゃなく、土方に寄り添う名前を見て柄にもなく、"裏切られた"なんて思ってしまった。
いらついて、いらついて
気付けば思ってもないようなこと吐き出していて、関わろうとしたあいつを突き放すように傷付けた。
いつものように言い返してくるかと思っていたのに名前は、俺を見たまま黙り込んでしまった。
そんな顔するなよ。
なんで、そんな泣きそうな顔すんだよ。
名前のその姿をみていたたまれない気持ちになって、当て付けの様に女の手を引いてその場から逃げるように名前に背中を向けた。
結局俺は、あの場から逃げてきたんだ。
自分から突き放す言葉を吐き出したくせに、名前から返ってくる言葉を聞くのが嫌だった。
そして時間が経ち落ち着いた俺に残ったものは
後悔と空虚感だけだった。
なんでだ?
名前は、暇つぶしの相手なんだ。
今だってそれは、何一つ変わりないはずだ。
なのにどうしてだろう
あいつの泣きそうな顔が
頭から離れない
君だけが届かない
また俺に笑ってくれ
なんて都合の良すぎる話
< >戻る