『あの、土方さ』


「どうした?これ。」


私の頬に手を添えて怪訝そうな顔で土方さんが私を見つめる。

どうしよう、どうしよう。


『こ、転んじゃって…』


「嘘、つくなよ。」


『……。』


「これ、殴られたのか?…誰にやられた?」




完全に、ばれてる。




どうにか言い訳しなければと焦れば焦るほどに私の心臓がバクバクと騒いでいる。


『……本当に、なんでもないんです。』


ギロリと睨む土方さんに身体が縮こまってしまう。


「……あいつらか?」


『え?』


「あいつらが原因か?」



土方さんの言ってる意味が分からなくて顔をあげれば、土方さんはVIPの方を睨んでいた。


あいつらって……もしかして晋助達のこと?


『ち、違っ…!』


「絶対に、許さねェ…!!」


『っ!土方さんっ!』



引き止める私を振り切って土方さんはVIPルームに向かって歩きだした。













VIPルーム



今日は久方ぶりのクラブ。


俺が久しぶりに現れたこともあってかいつも以上に女が寄り付いて来る。


だがそれを気にもとめずにいつもと変わらずに今日も酒を喉に流し込む。



「最近どうしてここに来なかったんですか?」


俺の腕に絡み付いて離れない女が俺に問う。


「別に、理由なんかねェよ。」


「…"あの子"がいなかったからですか?」


「あァ?」


「……なんでもないです。ねぇ高杉さん?今日、久しぶりにどうですか?」



含みのある笑いで俺を見上げる女。

それに答えるように俺もニヒルに笑う。


「悪いが興味ねェな。」


「あたし、高杉さんが最近相手にしてくれないから寂しいです。」



拒絶する俺に食い下がる女。…面倒臭ェな。



「気が向いたらまた相手してやるよ。」


面倒臭い気持ちを全面に押し出して答えてやれば、それでも女は嬉しそうに酒を喉に流し込んでいった。




バァンッ!!



物凄い音が聞こえて、そちらに目を向ければ、乱暴に開いた扉。


そして遠慮なく中に入ってきた見覚えのある男。



ガッ!



「なんだテメェは…」



荒々しく入ってきた男は俺に一直線に向かってきたかと思えば突然俺の胸倉を掴んできた。


こいつは…土方じゃねェか。









 
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