それから、気付けばあっという間に辺りは静かになっていた。




「名前!」


『晋助…』


「…大丈夫か?」


心配そうに私を見つめる晋助。

私の頬に、晋助の手が触れた。

それをたどって顔をあげれば、晋助の身体にはいくつかの傷がついていた。


そう、だよね。あんなに沢山の人がいたのに無傷な訳がないんだ。


『…ごめん。』


「あァ?」


『…怪我させて、ごめん。』


あの時、私がさらわれたりしなかったら


「なんでお前が謝んだよ。」


『……。』



晋助はこんな怪我なんてしなかったのに。


『ごめ、』


「名前のせいじゃねェ。…むしろ、俺がお前を巻き込んじまったんだ。」


晋助はばつの悪そうな顔で私を見た。


「だから、謝んじゃねェ。」


……もしかしたら、晋助も謝りたいのかも。



『…うん。晋助、助けに来てくれて、ありがとう。』



そうだよね。こういう時は"ごめん"じゃなくて"ありがとう"なんだよね。


「……うるせェ。お前が一緒に帰るっつーから迎えにきてやっただけだ。」


『…最初に帰るって言い出したのは晋助なんだけど…。』


「あァ?」


『…何でもないよ、ばか。』



…本当に、晋助は素直じゃないんだから。



『……本当に、ありがとう。』




少しだけ涙が出たのは



駆け付けてくれたことが嬉しかったから







 
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