『あの、』


「本当、死ぬ程心配したんだから……」



そういって銀時さんは更に私を優しく抱きしめてくれた。


いつものおちゃらけた様子とは似ても似つかない銀時さんに、私は戸惑ってしまう。



『ぎ、銀時さ』



ベリッ!!



「テメェいつまでも名前に触ってんじゃねェ。」



私が銀時さんに声をかけた時、急に肩を捕まれて思い切り私と銀時さんは剥がされた。


私の真横には、不機嫌に立つ晋助の姿。



「うるせー。……っと、名前ちゃんは俺が慰めとくから、お前は遠慮なく行ってこいよ。」


「……。」


二人の空気が一瞬にして変わった。


銀時さんの睨みつける視線の先には、銀時さんに蹴られた腹を摩りながら立ち上がる男。



「テメェらッ…!!この俺を馬鹿にしやがってェッ…!!」



男が怒り狂って私達を睨みつける。




晋助は振り返って私を見つめてから、男に殴られた頬に優しく触れる。



『……?』


まるで大切なものを扱うかのような瞳をするから、私はどうしたら良いか分からなくなる。




「……ちょっと待ってろ。」




そして晋助は私の頭をポンポンと撫でて背中を向けて男に向かって歩きだした。






「あーあ、あのオッサン、地雷踏んじゃった。」


『え?』



晋助に引きはがされたにもかかわらず、再び後ろから私に抱き着いている銀時さんが独り言のように呟く。


地雷って……晋助の?



「銀さん、高杉がキレてるとこ久々に見たなァ。」


『お、怒ってるんですか?』


どうやら晋助のあの冷静な様子は、怒っているらしい。


私には落ち着いてるように見えたんだけど…



「おォ、ちなみに銀さんも相当キてるけどね。」


「キ、キてる…?」



キてるって怒ってるって事だよね…?


心なしか抱きしめてくる腕に力が入ってるような……ちょっと痛い。



「あー…、考えたらかなり腹立ってきた。」


『え?』


「俺もちょっくら参戦してくるわ。」


『あ、あの、』


「いい子で待っててな?」


チュッ


『っ!』



銀時さんは殴られた頬とは逆の頬に、優しくキスをして私に背を向けて歩き出してしまった。




ふと視界を広げれば、大人数に圧倒的な強さの二人。


沢山の男達をどんどんと倒していく。あまりの恐怖に腰を抜かして後ずさる人もいるくらい。




気付けばボスと呼ばれた男は足元で意識を失って伸びていた。


しゅ、瞬殺……?



なんだか二人がいつものふざけた二人に見えなくて。









ああ、どうしよう



私はこんな時になんて不謹慎なんだ




二人の姿を見て




カッコイイだなんて思ってしまうなんて





僕たちとお姫様



溢れ出した想いに

追い付けない












 
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