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目の前には[VIPROOM]とかかれた重々しい扉。
ここに届けるのは初めてじゃないんだけど、今日はやたらと緊張する。
店長が「気難しい」とか言って私の不安を煽るからだよ!
よし、考えてもしょうがないから"目立たず地味に"早く行って早く戻ろう。
「失礼します。」
グッと力を入れて扉を押せば、中には驚くくらいの大人数。
なぜか圧倒的に女性の方ばっかりな気もするけど…。
「店員のお姉さんこっち!」
「っはい!」
あ!あそこだよね。早く持って行かなくちゃ!
呼ばれた声のほうに急いで向かえば銀色の頭の人が私を見ていた。
『お待たせ致しました。』
「いえいえー♪お姉さん俺に会うの初めてだよね?」
『あ、はい。』
銀色の彼は話し掛ける女性達を無視して私の元に駆け寄ってきた。
無視された女の人達は物凄い勢いで私を睨む。
あわわわ、だから目立ちたくないんだってば…!!!
『あの…何か…?』
「や、お姉さんもろ俺のタイプなんだよね!」
『は、はぁ。』
え?何なのこの人。
ただの酔っ払い?
「晋助さん、このあとはどうする?」
「えぇ?高杉さん!今日は私とって言ってたじゃない!」
苦笑いしながら目の前の銀色の男の人から少しずつ間隔を開けていく私の後ろから、ふと聞こえた女性の声。
振り返って目にはいったのは両脇に美人なお姉さんを座らせて、お酒を飲んでいる眼帯をした男の人。
あ、あの人が一番偉い人だ。
根拠はないけど、何となくそう思った。
っていうかあんなに綺麗な人をはべらすなんてさすが社長というかVIPルームというか…。
興味のなさそうに飲みつづける男の人はどことなく退屈そう。
つまらなそうに座る彼に、私は目が離せなかった。
って、私は早く戻らなくちゃ!
『じゃあ、失礼します。』
ここに長居は良くない。
店長も土方さんも戻ってきてるだろうし私も早く戻ろう。
「えぇー!!もう行っちゃうの!?」
目立たず、地味に。
そう心掛けてるにも関わらず目の前の銀色の男は大声で叫ぶ。
ちょ…!勘弁してくれ…!
『仕事が残ってますので…。』
そう告げて足早に歩けば出口はもう目の前。
あと少し、あと少しで出られる…!
キィ…バタンッ!!
『なっ…!?』
開きかけた扉が後ろから伸びてきた手によって再度勢いよく閉められた。
「テメェ、俺に挨拶無しで出て行こうなんざ良い度胸じゃねぇか。」
真後ろから聞こえてきた声に振り返れば、
眼帯の彼が私を見下ろしていた。
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