『証、明…?』




伝わるものがあるとは言ったけど、今ここで伝えてみろと言われたらどうすれば良いか分からない。




だけど、このままじゃやっぱり嫌だもん。




好きでもないのにこんなことしたくない。




それに、私の言いたい事が晋助に分かってほしい。




「…ほらな、やっぱり無理な」




ギュッ




『無理なんかじゃない。』





晋助の言葉を遮って私は彼を抱きしめた。




この気持ちが、少しでも伝わるように。





『ほら、暖かいでしょ?』



エッチなことだけじゃなくて、心の繋がりがあるって少しでも気付いてもらえるように。





"女"っていう言葉で括ってしまわないで。



みんな同じじゃない



それぞれ違うから





『もっと、私を信じてよ。』



もっと、私自身を見てほしい。



足りないなら、たくさん抱きしめるから。














ギュッ





ずっと動いていなかった晋助の腕が私の背中を抱きしめた。



『…晋助?』




無言のままの晋助に問い掛けてもやっぱり返事は聞こえない。



絶対に否定して来るかと思ったのに。





だけど、背中に廻る腕の力が強くなったような気がした。





『苦しいよ、晋助。』




どう感じてくれたのかは分からないけれど、少しでも伝わってくれた、かな?












「やっぱり、分かんねェな。」


『えぇ!?うわっ、…んっ、』



晋助の言葉に驚いて顔をあげたと同時に塞がれた唇。



最初とは違ってチュッとリップ音の触れるだけのキス。





「今日は見逃してやる。次は、覚悟しておけよ?」




見上げた晋助の顔は切なそうで、





でも少しだけ嬉しそうに笑ってた。




初めて見る晋助のそんな顔に私は動けなくなった。




そして晋助は立ち上がって玄関の方へ足を向けた。




「じゃあな。」





晋助の背中が見えなくなって、一度開いた扉が閉まるまで、私は動けなかった。







『…あんな顔もできるんじゃん。』






証明と優しい温もり



不覚にも、君の言葉に嬉しいと思ってしまった。

不覚にも、ときめいてしまった。














玄関を出てから3分



俺は限界だと力が抜けたようにその場に座り込む。




「あれはねェだろ…」





背中に残る名前の腕の感覚。



見上げた顔。



信じてと願った言葉。




「なんだ、これ…」




熱くなる頬とうるさい心臓に俺は戸惑いを隠せなかった。


 
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