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『はぁ、はぁ、』
VIPルームから飛び出して私は急いでカウンターに戻った。
「大丈夫か?」
息を切らせる私に心配そうにする土方さん。
いや、正直大丈夫じゃないです。
「そういえば、何であいつらと知り合いなんだ?」
あいつら?と首を傾げる私に土方さんはVIPルームを顎で差した。
そういえば、土方さんって仲悪かったんだっけ…
『いや、実は前回VIPルームに行ったとき、なんかよく分からないけど気に入られちゃったんです。それからなんか知り合いになっちゃったかなー、なんて…』
苦笑いしながら答えれば土方さんは無反応だった。
あれ?もしかしてこれ土方さんに言ったらまずかったのかな?
バリンッ
『っ!』
何かが割れる音がして顔をあげれば土方さんの手には粉々に割れたコップ(のような物)
『あの、土方さん?』
片手でコップ割っちゃったんですけど…!!
っていうか大丈夫なんですか!?
「おォ、悪い。」
ふと私を見て謝ってきた土方さん。
いや、むしろコップに謝ってください。
「なァ、名前。」
『は、はいっ!!』
なんか土方さん恐いんですけど!!
オーラが真っ黒なんですけど!!
「あいつらに無理矢理なにかされそうになったら、絶対に俺に言えよ?」
俺が殺してやるから、そう言わんばかりにこちらを見た土方さんの笑顔は
まさに鬼のようだった。
…キスされたなんて絶対に言えないんですけど。
困惑空間と心の隙間
分からない
いつもと変わらない
駆け引きの筈なのに
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