3
『ちょっと…、なんであんたが赤くなるのよ…。』
「う、うるせェ!こっち見んな!」
そう言って急に私から離れて顔を隠していた。
なんか、こっちまで恥ずかしくなってくるんですけど。
名前呼ばれるってそんなに嬉しいもんなのかな…?
っていうか、なんか可愛いんですけどあの人。
『って時間!やばい!』
ハッとして時計を見れば時間はもうバイトが始まる時間。
もう完全に遅刻決定だよ!急いで向かわなくちゃ!
一旦家に帰ろうと思ってたけど仕方ない、直接向かおう!!
『じゃ!私は帰るからね!』
離れた彼にそう告げて急いで扉に向かった。
ガクンッ
『うきゃっ!』
突然腕を捕まれて後ろを振り返れば高杉晋助。
「なァ、もう一回呼べよ。」
耳元で喋る声に体がゾクゾクした。
あれ?さっきの顔の赤い可愛いあなたはどこへ…?
そして奴の顔はわたしを見てニヤリと笑っていた。
あれ?もしかして私またピンチな感じ?
『…もう言わないから!!っていうかいい加減帰らせてェェェェエエ!!』
私の悲痛な叫びとは裏腹に後ろから楽しそうな笑い声が聞こえて、時間はどんどんと進んでいった。
僕の名前と甘い声
もっと聞かせて
もっと呼んで
君の声で
僕の存在価値を証明して
『ちょっと!近いんですけど!』
「あァ?テメェが誘ったんだろォが!」
『はぁ!?』
「あんな必死に何度も俺の名前呼びやがって。」
『なっ…!あれは防衛反応だから!誘ってないから!』
「はッ、そんなに照れんじゃねーよ。」
『……。』