きつく抱き締められて、震える身体。


目の前の晋助は、さっきの冷たい顔とは違う顔で私をまっすぐに見ている。



こんな私と離れたくないと、言ってくれた。


でも……


やっぱり頭に浮かぶのは、涙を流した彼女の顔。



『…そんなの、ダメだよ。私がいたら悲しむ人が、』


「グチグチうるせぇんだよ。」


『っ、』


更に強く抱き締められて、言葉が詰まる。


「テメェが気に病む事があるんだったら、この俺が全部ぶっ壊してやる。」


俺の優先順位は、俺が決める。


そう言って両頬に当てられた手が、熱くて、また涙が出る。


『……私は、晋助といてもいいの?』


もう傍にいれないと、思っていたのに。


晋助に迷惑をかけてばかりのこんな私なのに。


それでも晋助は、私といたいと言ってくれるの?



「当たり前だろ。テメェに拒否権なんてねェんだよ。……今度離れるなんて言い出したら、次は一生監禁してやるよ。」


ニヤリといつもみたいに意地悪に笑って、手を握る晋助。


こうしてまた私の手を引いてくれることが、どうしょうもない位に嬉しくて。



『……それじゃあ、ちゃんと晋助の傍にいなくちゃね。』



問題はたくさんあるけれど、一緒に解決していけたらいい。


今はただ、自分の気持ちに正直にこの手に捕まっていよう。



涙が止まらないのは、


きっと嬉しくて幸せだから。






手を引いて、愛しい君に


『(今は、このままで)』

「(いつか、同じ気持ちになれたら)」








『……ねぇ、いい加減離してよ。』



もう落ち着いたというのに、晋助は私を離してはくれない。


「………。」


私をジッとまっすぐに見つめて目を逸らさない。


「なァ、」

『……な、何よ。』


「お前の泣き顔って、結構ソソんのな。」


……は?


「もっと泣かせたくなる。」


ガバッと抱きついてきて、ぎゅうぎゅうと抱き締められる。


『ちょっ…!辞めてよバカ!あほ!変態!……ってあれ?晋助?』


いつもみたいにじゃれついてくると思ったのに、晋助は抱き締めたまま動かない。


「……けど、俺以外の奴の前で絶対泣くなよ。」


『なに言ってんのよ、ばか。泣くわけないじゃん!…しかも泣かせたのは晋助でしょ。』


「……。」

私がニヤリと笑えば、困ったような、すねたような晋助。


そんな晋助に私は顔が緩んだ。

大丈夫だよ、この涙は嬉しい涙だから。


『……じゃあお詫びに、おいしーいご飯でも一緒に食べに行こうか。』


約束、だったからね。


私がそう言えば晋助は少し驚いて、それから優しく笑って私の手を引いてくれた。


 
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