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仕事を早めに切り上げて、急いで家に帰る。
今日は名前と飯を食いに行く約束をしている。
いつも貧相なモンばっかり食ってるあいつに今日こそは金持ちの食っつーのをあいつの頭に叩き込んでやる。
不意に携帯の日付を見れば、今日は名前が出ていく予定日。
思い返せば、この1週間はすべて名前だった。
あいつが側にいると無性に楽しくて、あいつがいるだけで俺は何もかも頑張ろうと思えた。
今日で、最後か。
そんな中じゃ日が過ぎるのが早いなんて当たり前で、気付けばもう最終日。
…あいつの家、ブッ壊してやろうか。
そしたらあいつは行くところなんてなくて、ずっと俺の家にいるだろうに。
なんて物騒な事を考えながらも足を進めれば、目の前には自分の家。
ガチャリと玄関をあけて中に足を進める。
…………なんか、おかしい
不意に込み上げてくる違和感。
やけに静かな室内に、いつもならすぐに玄関に迎えに来るはずの名前の姿がない。
不審に思いながらも中に入れば、やはり無人の室内。
そして見当たらない名前の荷物。
まさか、帰る訳ねェよな。
……買い物でも行ったんだろ。
やけにざわつく胸を落ち着かせるように上着を脱いだ。
と、同時に目に入ったのはテーブルに置いてある1枚の紙。
「なんだ、…これ。」
読み進めて行くうちに、俺は意味が分からないと腹がたってくる。
「ふざけんなよッ……!!」
そしてろくに荷物も持たずに俺は家を飛び出した。
さようならの音
なんでこうも
すれ違ってばかりなんだろうか
晋助
ろくに挨拶もしないで突然出ていく事を許してください
大切な人がいたのに
無神経に晋助の家に上がり込んでごめんなさい
晋助の優しさに付け込んで
迷惑かけてごめんね
この1週間一緒にいてくれて
本当にありがとう
さようなら
名前