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お互い顔を見合わせて、目を見開くばかり。
「なんで、名前ちゃんがっ…!」
『っ!』
気づけばぼろぼろと涙を流し始めた目の前の彼女。
そして悲しそうな怒ったような顔で私を見た。
「私と高杉さんが"そういう関係"って知ってるでしょ!?」
『あのっ!違うんです!』
やばい、ちゃんと説明しなくちゃ。
絶対に勘違いしてる…!
『家がなくなっちゃって、1週間だけ!本当1週間だけ居候させてもらってたんです!』
「……。」
『やましいことなんて1つもありません!』
いくら訳を話しても、ぼろぼろ涙を流す彼女に、私の心も痛くなる。
この件に関しては、完全にわたしが悪い。
早く、この家から出ていかなくちゃ。
『ち、丁度良かった!』
「?」
『たった今!本当今すぐ帰るところだったんで助かりました!今荷物持ってきます!』
泣き顔の彼女に、ひたすらオロオロとしてしまう私。
半ば逃げるように家の中に戻った。
もう帰らなくちゃ。
今日一緒にご飯食べるって約束していたけれど、そんな約束、あんな彼女の顔を見たら無理だから。
なんで、こんな大事な事を忘れていたんだろうか。
私が手を伸ばしたのは1枚の紙とボールペン。
『よし、っと。』
1枚の紙に書き残したのは晋助宛のメッセージ。
ごめんなさいとありがとうの気持ちを込めて。
『……晋助、ごめんね。』
紙をテーブルに置いてポツリと呟いてから、肩に荷物をかけて玄関にむかった。
そして、玄関で泣いている彼女に頭を下げた。
『本当に、ごめんなさい。』
私の都合で、嫌な思いをさせてしまった。
深々と頭を下げる私に、口を開いた彼女。
「帰って…!。お願いだから高杉さんに近付かないでよっ…!!」
目があって、震える声で告げる彼女に
私は1つ頷いて、家を出た。
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