『あ、晋助今私のことバカだろって思ったでしょ。』


驚いた顔しちゃって失礼なんだから!


いや、いい大人が一生愛し合ってるとか夢見がちなのもわかるけどさ。


「……別に、そんなこと思ってねェよ。ただ、」

『……ただ?』


違うなら、そんな驚いた顔して一体どうしたっていうんだろう。


私が見つめていれば、晋助は少し戸惑ったように私を見た。






「お前は、一生愛し合う事ができると思ってるのか?」






それはあまりにも、真剣な顔だった。



『……できるよ。だって一生大事にしたい大切な人だもん。』

「っ、」



それくらい大好きだから、夫婦になるんだもん。


『そりゃたまにはさ、喧嘩とかもしちゃうかもしれないけど、仲直りしたらもっともっと大好きになると思うんだよ。』


だからこそずっと大切にして、一生想い続けてみせる。




『ってしんす、うわぁっ!ちょっ…!?』


黙ったままの晋助に顔を向けたのと同時に、ぐしゃぐしゃと頭を撫でられた。



「……そうか。」




ただ一言、そう言った。


本当に、晋助はどうしたんだろうか。


晋助が今何を考えているかは分からないけれど、見上げた顔は少し困ったようで


だけどそれ以上に嬉しそうに笑っていた。






昔も今も、きっと未来も


お前と

"幸せ"を築きたい、なんて

俺らしくもない







『晋助、私の話を聞いてくれてありがとう。……帰ろっか。』

「…そうだな。」


気付けは空は茜色になっていて、優しい光が私達を包んでいた。


"それじゃあ、また来るね!"


両親にそう告げて、私達は歩き出す。




『…そういえば、明日で最終日だね。』


思い返せば私が晋助の家に来てから明日で6日目になる。


家の修理は一週間という期間。


つまりは明日が最終日でその次の日にはとうとう私が家に戻る日が来たってこと。



『私がいなくなって寂しい?』


ニヤニヤして聞けばフイッと顔を逸らした晋助。


「……別に」


って寂しくないのかよ!


一週間とは言え食事を一緒にした仲なのにさぁ。


なんてつれない奴なんだ高杉晋助という男は!


『私は、ちょっと寂しい、かも。』

「……。」


一人暮らしなんだから当たり前の事なんだけど、これからは朝起きたときも夜寝る前も一人になる訳で。


『思った以上に、楽しかったから。』


最初は大変なことばかりなんだろうって思ってたけど、実際蓋を開けてみればそれはもう楽しくて。


そう考えたら少しだけ、ほんの少しだけど寂しい気持ちになった。



「いつでも、来ればいいだろ。」

『…良いの?』

「…お前がどうしてもって言うなら仕方ねェからな。」

『なによそれ!…でも、ありがとう。』



本当に、晋助はいい人過ぎる。


「……明日の夜、なんか食いに行くか。」

『やった!え?何?晋助のおごりですか?』

「当たり前ェだろ。今度はお前の頭に"金持ちの食"っつーのを教えてやるよ。」


『……マジか。き、期待してます!』


 
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