やさしいひと



「これでよし、しばらく安静にしてれば大丈夫だから。」


「あァ、良かった。」



治療が終わってグッタリする猫を撫でてやる。



「でも、お腹の傷の跡はきっと残っちゃうだろうなぁ…」


獣医が俺を見てため息をつく。


「……、夜中に本当助かった。悪かったな。ありがとうよ。」


「…あぁ、お大事に。」



緊急とは言え夜中の時間帯に無理矢理開けてもらった病院


そこから怪我した猫を抱えて外に出る。




「さぁて、どぉすっかなァ…」



俺を見上げる猫の頬を突きながら一人呟く。








「僕はもう、こんな使えないやついらないから。」









一体何なんだよあのガキ…



失敗作とか、使えないとかって



こいつだだの猫じゃねェかよ。



いくら考えても分からない事に俺は頭を悩ませる。



「あげるって言われたってうちは保護施設じゃねェっての!」



誰も聞いてないであろう文句を吐いて俺は歩き出す。




「とりあえず、帰るか。」



笑って再度猫を突いてやれば、今まで寂しそうにしていた猫は少しだけ機嫌が良くなったような気がした。

「にゃ」


俺を見て猫が鳴く。


…こいつ、思ったより可愛いんですけどォォオ…!!


猫の可愛さにニヤニヤしつつ俺は万事屋へと足を向けた。













ガラッ…




家に帰れば真っ暗な我が家。



当たり前か、今日は神楽も新八の家に行くっつってたし。



「ワン!」



俺が帰ってきた事に気付いて、定春が一声吠えて俺を迎える。




そして俺の抱える猫に気付いたのか、鼻をクンクンさせながら近付いて来る。


「これは食いもんじゃねェぞ、コラ。」



興味津々に近付く定春に猫が怯える。



「大丈夫だから」



頭を撫でてやりながら猫に声をかけたけど、やっぱり怯えたまま。




こいつ食われるとでも思ってんのかね





ガラッ



少し大きめのタオルを手に取ってから、定春におやすみと一声告げて俺は和室に入る。


今日の疲れた身体には年中敷きっぱなしの布団が天国に見えた。




タオルを布団の横に置いてその上に猫を乗せる。



ふと目についた腹の包帯。

思った以上に深い傷



「ひでェな、痛いよな」



なんて言っても分からないか



「捨てられたんだな、お前」



やっぱり不思議そうに見上げた猫に、俺は少しだけ切なくなった。





電気を消して一度頭を撫でてやれば猫は俺の手を舐める。



やっぱりこいつは可愛いと思う



なんて思いながら瞼を閉じれば、俺はすぐに眠りについた。


















「にゃ、…。」



モゾモゾと俺の布団に何かが入ってくる感覚。


うん、暖かい。



抱きしめれば人肌の温もり。



こいつめっちゃ身体柔らかいし、抱きしめ心地最高。




…ってあれ?



身体!?





「銀さん!!もうお昼ですよ!いつまで寝、て……」


俺が驚いて起き上がったのと同時に開く襖の扉。


途切れた新八の声。





そして、俺の目の前には見知らぬ裸の女。




「「ギャァァァアアア!!」」




俺と新八の叫び声が響き渡るある日のお昼の事でした。





こんな僕を、拾ってくれた





 



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