おとしもの



「あ"あ"あ"、完全に飲み過ぎたなこりゃ…」



酒を飲み過ぎフラフラする足取りで我が家である万事屋に向かって足を進める。



あー、最近真面目に働いてねぇなァ



つーか、最近頭使うような事したっけ?



いや、絶対にしてねェな。


やばいやばいと己の生活を悔やみながらしばらく歩けば、目の前の橋の上には何かを見下すようにうずくまる少年。



え?ガキ?こんな夜中に?


時計の針はテッペンをとうに過ぎた真夜中を指す。










「お前が、いけないんだよ。」




怪しみながらも段々と近付けば聞こえてくる少年の声。



何かに話し掛けているのか?




「お前なんか、いらない。可哀相だから、僕が責任とって処分してあげるね。」



「にゃー…」



後ろから覗けば少年の手には血を流した小さな猫。


苦しそうに一言鳴いた姿は、もう終わりを示しているようだった。



そして少年が振り上げたのは銀色に光る鋭利な刃物。





「っ!おい!」




思わず少年の手首を掴んで勢いを止める。



「悪いけど、こりゃ見逃せねェーよ。」



振り返るガキに、俺は睨みを効かせる。


ペットがいくら言うこと聞かなくたって殺しちゃまずいでしょ。





「何?邪魔しないでくれる?」



見付かったことに驚きもせずに俺を見上げる。



これだから最近のガキは…




「こいつ、お前のペットだろ?」



苦しそうに息をする猫をアゴで指す。



これマジで今すぐ病院連れていかないとヤバいだろ。



「ははっ、これがペット?違うよ、これは失敗作なの。」


「…失敗作?」



何言ってんだ、こいつ。





「あ、そうだ。」


「あァ?」


「これ、お兄さんにあげるよ。いらなくなったら、また僕が殺しにきてあげるね。」



そいつはニヤリと笑ったあと、まるで物を扱うかのように俺に猫を投げつける。



「テメェ…!!」



いくらなんでも、やり過ぎじゃねェのか…!?



「僕はもう、こんな使えないやついらないから。」


「にゃー…」


俺の腕の中でうずくまりながら寂しそうにガキを見つめる猫。




捨てられるって



分かってるのか?



「おいっ!…ってあ、れ…?」



猫を見た後文句を言おうと顔をあげれば




目の前には誰もいなかった。




消えた…?






「にゃぁー…」



その声に気付いて俺は病院に向かって一目散に走り出す。




あいつが何者か解らないけれど、




とりあえず今はこいつを助けることだけで頭が一杯だった。





痛い、でも暖かいね





 



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