困りました








『ここ、……どこ?』



よく晴れた昼下がりに家を出て、なまえはいつものように散歩をしていた。


……はずが、


見事に迷っていた。



辺りを見回しても見覚えのない景色。

知らない人ばかり。


『……どうしよう。お腹すいた。』


何も食べずに歩き続けたからか、なまえの腹の虫が鳴っていた。


食べ物を持っていない、…訳ではない。


なまえの手には散歩の途中に出くわしたお妙さんの卵焼きがある。


お腹がすいたら食べてね、と優しい言葉をかけて渡してくれた卵焼き。


ただそれは食べれるかと聞かれれば別物だ。


というか、以前に寝込んだせいかお妙さんの卵焼きを食べることを銀時に禁止されている。




気付けば家を出た時から時間がたち、空は薄暗くなってきていた。


銀時に決められた門限はとうに過ぎていて、焦る気持ちに泣きそうになるなまえ。


(早くかえらなきゃ、銀ちゃに、怒られちゃう…。)


再度見渡してもやっぱり見覚えのない景色。


不安に押し潰されてしまいそうでなまえはうつむいた。







「そこのお嬢ちゃん、泣きそうな顔してどうした?」



不意に聞こえた声に、顔を上げれば知らない人。


だけど来ている服は、そーご達が着ていた黒い服。


『こ、こんばんは。』


とりあえず挨拶をしてみる。


銀ちゃに、知らない人とは関わっちゃ駄目と言われている手前、道を尋ねていいのかも分からない。


(知らない人じゃなきゃ、いいのかな?)


不意に思い付いた名案に、なまえは口を開いた。


『……そーごの、おともだち?』


「そーご?」


目の前の男の人は首をかしげてなまえを見た。



『そーご達も同じ、黒いふく。』

「…あぁ、そーごって総悟の事か。」

『知ってるの!?』

「知ってるも何も、真撰組じゃないか。」


(しんせんぐみ…)


真撰組の意味をわからないけど、今はそれどころじゃない。


『ここはどこ、ですか?』


知り合いと分かれば、道を尋ねる他はない。


「なんだお嬢ちゃん、迷子か。どこから来たんだ?」

『…よろずや。』

「万事屋!?かぶき町の!?」

なまえがコクリと頷けば、目の前の男の人は目を見開いて驚いた。


「すごい距離を歩いてきたんだなァ。」

『……早く、帰りたい。』


早く帰って、銀ちゃたちに会いたい。


早く帰って、みんなにごめんなさいしなくちゃ。


「よし、じゃあ送ってってあげるからね。」


そういってなまえの頭を撫でた。


(あったかい…。)


今まで一人ぼっちだったからか、暖かい体温に、少しだけ泣きそうになった。




「なまえ!」


と、撫でられていると不意に聞こえた自分を呼ぶ声。


『そーご!』


顔を上げればそこには、見慣れた人がいた。


パタパタと走りよって総悟に抱き付くなまえ。


「こんなとこで何やってんでさァ。」

「どうやら迷子になってたみたいだぞ。」

「で、近藤さんが保護した訳か。」


なまえは2人のやり取りを目で追うばかり。


「また散歩でもしてたのか?」

『うん、いつのまにか知らないとこに、きちゃった。』

「だから散歩すんなら俺を呼べってあれ程言っただろ。」

『に"ゃっ!』


ムッとした総悟にバチンとデコピンをくらって今度は痛みから泣きそうになる。


「まぁまぁ、ってかこのお嬢ちゃんと知り合いだったんだな。」

「お嬢ちゃんじゃなくて、なまえでさァ。」

『はじめまして、なまえです。』


ペコリと頭を下げれば、目の前の男の人も口を開いた。


「はじめまして!俺は近藤勲!お妙さんの愛のストーカーです!」


自信満々に言う台詞に、なまえはあることを思い出した。


『お妙さん!』

「お!お妙さんを知ってるのか!?」

『お礼にこれ、あげます!お妙さんのたまごやき!』


ズイッと差し出したのはお妙さんの卵焼き。


なまえが渡すと近藤さんは嬉しそうにはしゃいでいた。


(よ、良かった…!)


銀時に怒られるせいで自分じゃ食べれないので、喜んで受け取ってもらえたことがとても有り難い。



「じゃ、帰るか!」


はしゃいでいた近藤さんはニコリと笑ってなまえを撫でた。

『はい!よろしくお願いします!』


そして3人で笑って、足を進めた。







門限は守りましょう




〜総悟くんと近藤さんの内緒な話〜



「…なァ、近藤さん。」

「ん?」

「こいつ(なまえ)、屯所に連れて帰りたいでさァ。」

「え!?ダメダメッ!万事屋に殺されるからね!ってかそれ以前にトシが許さないでしょ!」

「…それがそうでもないんでさァ。」

「??」







『あ!そーご!そーご!』

「ん?」

『わたし、こんどーさん、動物ずかんで見たことあるよ!』


「「…………。」」




 



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