けど







土方の質問になまえが戸惑っていれば、土方は急になまえの腕を掴んだ。



「ケガ、してんのか?」


土方の真剣さになまえがコクリと頷けば、腕を掴む力は更に強くなる。


『っ!』

「どこだ?」

『お、お腹…。』


ビクビクとしながら答えれば、土方は今度は眉間にシワを寄せた。



「何でだ?」

『…え』

「お前、腹ケガしてるクセになんで手の平ケガしてねェんだ?」


『…わ、分かんない。』


もう何がなんだか分からなくて今にも泣き出してしまいそうななまえ。

そんななまえをみて銀時が口を開いた。


「土方テメェ何が言いてェんだ。」


そういってなまえの手を掴む土方の腕を掴んだ。

「…うるせぇ、テメェは黙ってろ。」


銀時にそう吐き捨てて、土方はなまえを見た。


「お前は、俺のタバコ握り潰したんだ。なのに何でケガしてねェんだ?」

『…分かんない。』


「お前、天人か?」

『…ち、がう。』


前にも聞かれた、天人という質問。

なまえはフルフルと拒否するように首を横に振る。




「ならお前は、一体何者だ?」




その言葉に、土方の真剣な瞳に、なまえは口を閉ざした。



……あれ、わたし、だれだっけ?


どうして、ここにいるの?


なんで、こんなからだなの?


なんで、うまれたんだっけ?







「ほら、やっぱりお前は失敗作。」







『っ!』

不意に思い出した"誰か"の声に泣き出しそうになる。


『わたし、は…。』



何かいわなくちゃいけないのに、身体が震えて声がうまく出ない。


早く、答えなくちゃ…!







「いい加減にしてくんねェか?」


『っ!』


不意になまえの身体を引いたのは、銀時の腕。

なまえを土方から隠すように銀時の後ろへ引っ張られた。


「テメェのくだらねぇ興味本位になまえを巻き込むな。」



そう言って土方を睨む銀時を見ていれば、ポンッと頭を撫でられた。

見上げれば、そこにいたのは沖田だった。

不安いっぱいのなまえの顔を見て何も言わずにニィッと笑った。

それを見れば、"大丈夫"と言われたようで無性に安心感が込み上げてきた。


気付けば涙がポロポロと流れていて、思わず俯いてしまう。


「あーあー。土方さんのせいで泣いちまいやしたぜ。」


優しく撫でられるもんだから更に涙が出てきてしまう。

それを見た土方は焦ったように口を開いた。


「そ、そんなつもりじゃ…!」


オロオロする土方に今だに睨みっぱなしの銀時。

銀時は大きなため息をついて急になまえの手を引いた。



「帰るぞ。」


なまえの有無も聞かずに踵を帰して歩き出そうとしたとき。



「わ、悪かった!」



振り返れば、土方が頭を下げていた。


『……。』


困ったように、それでいて少しだけ悲しそうな土方の顔を見て、なまえは口を開いた。



『…ごめんなさい。』


そう呟けば、銀時の掴んでいた手にグッと力が込められた。

それと同時に土方をまっすぐ見つめた。


『わたし、あまんと、じゃありません。だけど、何者かも…わかりません。』

「……。」

『わたしは、なまえです。なまえって、名前なんです。』



困ったように笑えば、土方もそんななまえをみて困ったように笑った。



「…そっか。泣かせてごめんな、なまえ。」


そういって土方に名前を呼ばれたなまえは、嬉しそうに笑った。



『はい。これからも、仲良くして、くれますか?』



首を傾げて聞けば、当たり前だ、と土方も嬉しそうに笑った。







今はまだ

知らないままで






 



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