きけん!取り扱い注意!






今日も晴天に恵まれ、一人お散歩に出かけていたなまえ。


いつものように野良猫と遊んだあと、歩いていれば見えてきたのはうつむいている銀色のご主人さま。

自分の良く知る人物だ。


『銀ちゃ!なにしてるの?』


早速話し掛ければ、この世の終わりという顔でこちらに振り返ってきた。

そしてその後ろの建物の扉が開けば中からは耳をふさぎたくなる位の大きい音がする。


「今ね、どん底という暗闇を味わってるとこ。」

『お財布?』


銀時が取り出したのはカラッポのお財布。


「なまえちゃん、今日も夜飯は豆パンね。」

『豆パン!やった!』

「…豆パンで喜んでくれるのはうちでなまえだけだよ。」


銀時は深いため息をついてなまえの頭を撫でた。

豆パンすごくおいしいのに、銀ちゃはなんでそんな残念そうな顔するのかな?



「あら?銀さん?」

「げ、」


不意に後ろから声が聞こえて振り返れば、そこにいたのは綺麗な女の人。


「あら?あなたがなまえちゃん?」

『は、はじめまして!こんにちは!』

「こんにちは。私は志村妙です。」


女の人が言った名前に聞き覚えがあり、頭の中で何度か繰り返す。


しむら、しむら、……しむら?


『……しむらってしんぱちと一緒?』

「ええ、新ちゃんの姉です。」

ニッコリと笑った女の人になまえはやっと思い出した。


『…お妙さん?』


きっとこの人は万事屋の会話の中に出てくる"お妙さん"だ。

お妙さんは頷いて「なまえちゃんが私を知っていたなんて嬉しいわ。」と笑っていた。


「こんな腐った世の中でちゃんと挨拶が出来るのはなまえちゃんくらいね。」


更にニッコリと笑ったお妙さんに、褒められたなまえも嬉しそうに笑って返す。

この人は優しい人、だ!


「そうそう、いい子でしょうちのなまえちゃんは。」

「ええ、銀さんとは大違い。」


ポンポンとなまえの頭を撫でる銀時と、さっきとは違う黒い笑顔で笑ったお妙さん。

…あれ?さっきまで和やかな空気だったのに、銀ちゃとお妙さんの空気はピリピリとしている。


「あら?新ちゃんにろくにお給料も払わないくせにまたパチンコですか?」


女の人の視線の先にはあの"うるさいお店"。


「いや、……まぁ、はい。すいません。」


目を逸らす銀時になんだか良く分からなくてなまえは首を傾げている。

このうるさいお店は、悪いところなのかな?


「どうせ今日も豆パンですか?」

「ま、まぁ…。」

「だと思って私、卵焼き作ってきたんです。」


カパッ

お妙さんが取り出したのは、真っ黒のかたまり。


『卵焼き?』

見たこともない物体に首を傾げれば、銀時はさっきとは比べものにならないくらいのこの世の終わりという顔で無言で思いっきり首を振った。


「えぇ、とっても美味しいわよ。なまえちゃんもどうぞ。」

『ありがとう!』

「バカッ!やめろっ!」


ズイッと差し出された卵焼き、もとい黒い物体をなまえは躊躇いもなく口に入れた。

それと同時に銀時から必死の声が聞こえたが時すでに遅し。


ボンッ!


『にゃ…あ"…』

「あら、どうしましょう。」

「だから言ったのにッ…!!」


頭をかかえる銀時と、驚いたようなお妙さん。

そして異様なくらい小さくなったなまえ。

つまりは

猫の姿になってしまった。



『にゃ…あ"あ"あ"…』



今日の教訓、


むやみに人から貰い物をしてはいけない。







くろいもの、こわい





 



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