ごちそう






「ところでさ、なまえって何食うの?」


「あ、そういえば…」



一緒に住むのは良いけれど、なまえは何を食べれば良いんだ?


今更なことを思い付いて万事屋メンバーは頭を傾げる。


つーか基本的な姿は猫なのか?それとも人間なのか?


なんて事も頭の片隅に浮かんだけれど今は細かいことは気にしない事にしよう。うん。



『ごはん?』


「そ、ご飯。今まで何くってたんだ?」


『…うーん。』



万事屋メンバーに加わって一緒になまえも首を傾げる。



「猫だから魚とかですかね?」


さすが新八。当たり前の返答。っていうか返答も地味。


でもまぁ、猫って言えば魚だよなァ。


『…うーん。あっ!ネズミ好き!』


「「ネッ……ネズミィィィイイ!?」」



ネズミってあのチューチューのネズミ!?

あの前歯が強烈でレストランの厨房とかに出てきちゃうようなあのネズミ!?


ってあれは人の食い物じゃねェェエエエ!!


あ、でも猫だからか!?猫だからか許されるのか!?


『すごく、おいしい!』


驚く俺と新八を余所になまえは嬉しそうに笑った。


おいしいってあんた…


「そ、そうなんだ…。」


『うん?』



顔を引き攣らせる俺達を見て首を傾げるなまえ。


「後は…何を食べるんですか?」



気を取り直すように新八がなまえに聞いた。


そ、そうだよな。さすがにネズミは捕れねェもんなァ…。



『後は………うん!何でも食べる!』



なまえは一間隔あけてからニッコリと笑って俺達を見た。


今の間はまさか……!?



「フッ…気ィ使われてるアルネ。」


「やっぱマジでかァァァアア!!」


今まで黙っていた神楽からの予想通りの反応に思わず打ち沈んでしまう。




「なまえ!なまえは豆パン食べるアルカ?」


『豆パン?』


「これが豆パンアル!」



打ち沈む俺を無視して神楽が取り出したのは万事屋お馴染みの豆パン。


神楽はそれをなまえに渡した。


なまえはそれを一度不思議そうに見てから小さく口に入れた。


もぐもぐもぐ…


『っ!』


「ど?おいし?」


『すごくおいしい!豆パン!』


「やったアル!」


なまえはどうやら気に入ったようで余りの豆パンをどんどんと口に運んでいった。


「気に入ってくれたみたいですね。」


『うん!おいしい!』


「豆パンをそこまで気に入る奴もなかなかいないよなァ。」



なまえはお腹が空いていたのか、はたまた余程豆パンが気に入ったのか、残りの豆パンをあっさりと食べ終わってしまった。


そして最後の一口になった時になまえに問い掛ける。



「そんなにうまい?」


『うん!!』


満足そうに笑うなまえ。


「ネズミと、どっちがうまい?」


悪戯に聞けば、少し悩んでからニンマリと笑った。



『豆パンが、1番すき!』


なまえは自信満々に答えてから最後の一口を頬張った。



「そりゃあ良かった。」




とりあえず、一安心だな。


豆パン嫌いだったら万事屋でやっていけねェもんなァ。


……しかしまぁ、そんなに嬉しそうに食べて随分と可愛らしいですこと。



なんて父親みたいな心情を隠すようになまえの頭をぐりぐりと撫でてやれば、なまえは不思議そうに俺を見上げた。





とりあえず、なまえの好物は豆パンに決定!







おいしい、おいしい
はじめてのごちそう





 



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