よろしくお願いします






「うーん、名前かぁ…」




しばらく考えてはみたけれど、全くと言って良いほど思い付かない。



先程から神楽や新八が案を出すけれどとてもじゃないが採用なんて出来るものが一つもない。





まぁ、定春の様なペットの名前を決めるのとはまた訳が違うからな。













『にゃ…』



声が聞こえて振り返れば、寝ていたはずのネコ娘が瞼を擦りながら眠そうな顔で立っていた。





「…おはよーさん。コラ、服ぐらいちゃんと着ろ。」



肩から下がりかけていた服を上げながら自分の隣に座らせる。




目の前から「もうすっかりお父さんみたいですね。」なんて新八の声が聞こえたけど気にしない事にする。





「なァ、お前他に呼ばれてた名前ねェの?それかお前が呼ばれたい名前。」



俺らが考えるのも限界があるし、もうこの際こいつに自分で決めてもらうしかねぇ気がしてきた。



『…みんな、ネコって呼ぶ…。』


「いや確かにお前は猫だけども。そうじゃなくて!!」



猫なんて最初っから分かってんだよ。


あった時が猫の姿だった訳だし。



「他は?」



『……。』



だけどやっぱりこいつは困ったように黙り込んだまま。




『……。』




やっぱ無理、か?




『……。』


「…だ……きよ…、…なまえ。」




ピクンッ!


『なまえ。』



「え?」



ネコ娘の身体が一度大きくピクンと動いて、一言呟く。



「なまえ…アルカ?」


「なんか名前、みたいですけど…」



神楽と新八が不思議そうに首を傾げる。



それを見たネコ娘がコクンと頷く。



『なまえって、呼ばれてた。誰にか、…分からないけど。』






なまえ、ねぇ…




「ならそれで良いんじゃねェ?」



今までで1番人間らしいし、1番しっくりくる。





「キャッホィ!!やっと決定アル!なまえ!」


ブンブンとなまえの手を握る神楽。

それに釣られるように揺さぶられるなまえの身体。



名前を呼ばれた途端にパァァっと明るくなるなまえの顔



『なまえって、呼んでくれるの…!?』


「当ったり前アルネ!なまえ!」



名前で呼ばれることが余程嬉しいのか、今度は二人してお互いの手をブンブンと振りまくっていた。






「私が神楽ネ!かぶき町の女王様アル!もしくは工場長ネ!」


『かぐら?じょおー?こう…じょーちょー?』



神楽の不明な自己紹介になまえがテンパる。


そりゃそうだよな、俺が聞いても結局お前誰なんだって思うし。




「この子は神楽ちゃん。そして僕が志村新八です。よろしくね、なまえちゃん。」


『かぐら!しんぱち!』



座るなまえに優しく目線を合わせて自己紹介をした新八。


うん、神楽より断然にマトモ。


「で、この人が」


「銀ちゃんヨ!」



新八と神楽が二人で俺を見る。


それに釣られるようになまえも俺を見上げる。



『銀ちゃ!』


俺の名前を聞いて嬉しそうに笑う。


いやいや、銀ちゃじゃなくて銀ちゃんだからね。


いやむしろ俺フルネーム坂田銀時ですからね。




「あのな、俺のなま」


『銀ちゃ!』


「……。」




嬉しそうに俺の名前を呼ぶもんだから、何も言えなくなった。



『銀ちゃ、かぐら、しんぱち!』







ま、いっか。



なまえが嬉しそうだから。






「これからよろしくな、なまえ。」





そう言って頭を撫でてやれば




なまえは更に嬉しそうに笑った。








おせわに、なります





 



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