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「おい、」
『………。』
「おい、名前。」
『…………んぅ。…』
誰かに名前を呼ばれ寝ぼけ眼で起き上がると、目の前には晋助の姿。
『……なんで、晋助がいるの?』
「は?」
『………』
……あぁ、そうだ。
昨日のバイトの帰りに晋助に晋助に拉致られて、気づけばこの家にいたんだ。
それから何時もの如く"腹へった"などとうるさいのなんのって。
結局ご飯作ってあげたんだけど。
………で、疲れてそのまま寝ちゃったんだった。
「お前、そろそろ時間だろ?」
『………あぁ、そっか。』
「お前どんだけ寝ぼけてんだよ。」
時間を見れば、夜のバイトの為に起きるには丁度良い時間。
準備、しなくちゃ。
まだ少し寝惚けた頭で起き上がった。
『………ってかさ、』
「あ?」
『なんで、そんなニヤニヤしてんの?』
私の目の前の晋助は、いつになく機嫌が良いみたいだ。
なんか、空気が柔らかいって言うかなんと言うか。
とにかくいつもより上機嫌。
むしろいつもの晋助じゃない。
「お前、気付いてないのか?」
『は?』
気付いてない?何を?
晋助の驚いた顔を見て、首をかしげる私。
『気付いてないってな』
「いや、何でもねェ。とりあえず早く準備しろよ。」
『う、うん。』
まるで話を逸らせるような声で、少し気になるけど私も気にしない事にした。
そして晋助はと言えば、"デジカメ"だの"写真"だのぶつぶつ言いながらそそくさと部屋を出ていった。
な、なんだったんだろ。
『……とりあえず今のうちに着替えなくちゃ。』
晋助が部屋から出ていった今、着替えのチャンスだ。
着ていた服に手をかけて、いつも通りに服を脱いだ。
あれ?服が何かに引っ掛かって……
『ぎゃぁぁぁぁあアアア!!!』
あああありえない!有り得ない!有り得ないからマジで!
自分の首もとを見れば、まさにペット用の首輪がついている。
しかも見覚えのあるいつぞやのペットショップで見た首輪。
何これ!?え!?私ペットじゃないんですけど!?
「どうした!?」
『ぎゃああ!』
私の叫び声を聞いて驚いた晋助が、勢いよく扉を開けた。
しかし私の今の格好といえば、まさに下着姿だ。
もう首輪に驚けばいいのか、それとも下着姿を見られたことに驚けばいいのか、大混乱で頭が回らない。
「くそ!なんでこんなときに限って!」
そして晋助を見れば、デジカメが見つからなかったのか、携帯で私の姿を連写している。
『っておぉぉぉい!!!!何してんのよバカ!!』
スパンッと晋助の携帯を奪い取り、まるで光の速さで今とった写真を全消去。
あ、危なかった……。
目の前で若干キレながらふてくされる晋助をシカトしてダッシュで今着ていた服をもう一度着た。
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