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銀時さんがいなくなってからしばらくたち、私は店内の見回りをしていた。
足を1歩踏み出す度に頭にくる激痛。のどはカラカラだし関節もギシギシ痛むし視界もふらつく。
ガンガンに響く音楽に、窮屈な人混み。
『うー…。痛くない、痛くない。』
まるで暗示のように呟くけど、一向に良くなる気配はない。
人混みから離れ壁に伝いながらしゃがみ込んだ。
こんな事で、へこたれてる場合じゃないのに…。
不運なことに今日は人手が少ない。その上1人で10人分くらい働いてるんじゃないかってくらいの1番頼りになる土方さんが休みって言うのが最大の痛手である。
うずくまって痛みが通り過ぎるのを待とう。少し休めばきっと楽になるはずだから。
「おい。」
『っ!はい!……って晋助、か。』
突然声をかけられお客さんかと思い顔を上げれば、目の前にいたのは晋助だった。
そういえば、今日見てなかったかも…。
『今、来たの?』
「んなことどうだって良いんだよ。お前、顔真っ青じゃねェか。」
…まぁ、体調悪いですからね。
なんて答えられるはずもなく、とりあえず無言で苦笑いになる。
らしくもなく少しだけ慌てた晋助は私に目線を合わせてしゃがみこんで私の額に手を伸ばした。
「こりゃやべェな…!」
相当熱かったのか、目を丸くして私を見る晋助。
『………。』
もう言葉を発する気力もない。
5分、いやあと3分だけでいいからこのままにして放っておいて欲しい。
「とりあえず行くぞ。」
なんて思っていたのに空気も読めずに晋助は私の腕を掴んだ。
『っ!』
「………。」
腕を掴んだ晋助に大丈夫、とふるふると首を降れば晋助は私を睨んで眉間にシワを寄せた。
「どう見たって大丈夫じゃねェだろ。」
『だい…じょう、ぎゃあ!』
と、同時に晋助に担ぎ上げられた。
ず、頭痛が!し、死ぬ…!っていうか落ちる!怖い!
『何するのよ!』
「帰ェるぞ。」
『はぁ!?そんなの無理だから!』
「なんで?」
『なんでって…人手が足んないのよ!いいから早く降ろしてよ!』
一体急になんだって言うんだ。
そんな簡単に早退出来るんだったら私だってとっくに帰って布団で寝てますよ!
「要は代役がいればいいのか?」
『…そ、そうだけど!でもそんな人いませ』
「ちょっと黙ってろ。」
私の言葉を遮って晋助が取り出したのは携帯。
そして素早くどこかへ電話をかけた。
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