「ちょっと来いよ。」


『わっ…!』


グイッと晋助に手を引かれ、人の少ない場所にやってきた。


『一体どうしッ…!っ!』


どうしたのかと口を開こうとしたとき、晋助の顔が私の首もとに。


それと同時に首筋にチクリと痛みが走った。



『な、にすんのよ馬鹿!』


思い切り晋助を押せば、意外にもあっさりと身体は離れた。


「マーキング。」


『は…?』


マーキングって犬がするやつ?

ってまだそのネタ引っ張ってんのかい!



……あ、あれ?


『ネックレス…?』


ため息をついたと同時に、首もとで聞こえた小さな物音。

手を触れれば、そこにはシンプルなネックレスがついていた。


『晋助、これ…!』


「マーキングの意味、知ってるか?」


一体どうしたのかと聞こうと思ったのに、目の前の晋助はそんなことを呟いて、私の顔のすぐ後ろの壁に手をついた。


『ちょっと…!近っ…!』


「自分のモンだと他のやつに示す為だ。」



気付けば、晋助と私の距離は数センチ。


そして、逆の手で私の頬に触れて、耳元で口を開いた。








「お前は、俺のモンだ。」








ドクン、と大きく心臓が動いて、まるで身体が固まったように動かない。


ニヤリと笑った晋助を、私はただただ見ていることしか出来ない。


一体、なんだって言うんだ。


急に、こんな…!


『な、何言ってんのよ!』


バクバクと動く心臓をさりげなく抑え、晋助から離れた。


きっとこんなに落ち着かないのは、晋助のエロボイスを久しぶりに聞いたからだ。


あぁもぅ!落ち着け私の心臓!



『からかわないでよ!もう戻るからね!』



これ以上晋助といたら、更にからかわれそうだ。

それに見回るには充分な時間が過ぎていたし早く戻らなくちゃ。


そう言って隣でククッと笑う晋助を尻目に、私は歩き出した。


 
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