『晋助。』

「あ?」

『はい、あーん。』



不意に名前を呼ばれて顔を上げれば、目の前に差し出されていたのはフォークにのったケーキだった。


「な、なんだよ。」

『半分こ、するの。』


さも当たり前かと言うように差し出すから、俺は思わず固まってしまった。


「お前が全部食えよ。」

『だーめ。晋助だって疲れてるんだから、ね?』

「……別に疲れてなんかねェよ。」


お前に用意したんだから全部1人で食えばいいのに。


『いいから、ほらあーん。』

「……。」


普段は痴漢だの変態だの騒ぐくせに、なんでこんな時に限ってこんな積極的なんだよ。


あーん、だなんてどこぞのバカップルがやるような………













でもまぁ、そこまで言うなら付き合ってやらねェ事もないが。


いや別にこいつとカップルらしいことをしてー訳じゃねェし。


ただそこまで言うから仕方なく付き合ってやるだけだからな。


「ん。」


素直に口にくわえれば、口のなかに広がったのは甘ったるい味。


「甘ェ。」

『ね、すっごいおいしいよね!』


普段は自分から甘ェモンなんて食わねェけど、今なら"疲れたときには糖分"っつー意味が少しだけ分かった気がする。



結局、名前が何度もすすめてきて小さなケーキは二人で分ける形で完食した。




「良かったのか?1人で全部食わなくて。」


食い終わってから言うのもなんだけど、1人で全部食べても良かったと思う。


『これでいいの。』

「あ?なんでだよ。」


絶対に1人の方がたくさん食えんじゃねェか。


こんな小さなケーキを二人で分け合う事の意味が俺には分かんねェよ。


俺が名前を見ていれば、名前は俺と目を合わせた。








『晋助が元気でいてくれる事が、私はすごく嬉しいんだよ。』






名前の綺麗に笑った顔をみて、俺は言葉が見つからなくて。




なんで、お前はいつもそうやって他人ばかりなんだろうか。


『だからね、一緒に食べて、一緒に元気になろうよ。』




なんで、そうやっていつも当たり前のように俺と並んでくれるんだろうか。



そんな事を簡単にするから、俺はお前が手放せなくなるのに。


女なんていつかは離れるとわかってるのに、お前をどうしても傍に置いておきたくなってしまう。


お前のその態度が、自分で自分の首を絞めてる事にも気付かねェなんて。


お前がそんなんだから、俺は離れられないっていい加減早く気付けよ。






「やっぱお前、本物の馬鹿だな。」





いつか、この胸の痛みの意味が分かる日がくるんだろうか。










お前が傍にいるだけで

俺は元気になれるから








『ごちそうさま!すっごいおいしかった!ありがとう!』


ケーキを置いていたお皿を片付ける為に立ち上がった名前。


『わっ!』


俺はその手を掴んで強く抱き寄せた。


「お礼は?」

『へ?』

「この俺がわざわざ買ってきてやったんだ。」

『…分かったよ!あのケーキいくら、』

「あ?金なんかどうでもいいんだよ。」

『え、じゃあどうしたらいいのよ。』

「んなこと決まってんだろ。」


『んっ!』


チュッと音をたてて塞いだ名前の唇。

そして唇を離せば、至近距離で名前と目が合う。


「…甘ェ。」

『な…にすんのよ変態!バカ!』

「何って"お礼"だろ?」

『こんなのお礼になる訳ないじゃない!』

「…確かに。一回じゃ割りに合わねェな。」

『………は?』


俺がニヤリと笑えば、名前は危険を察知したのか俺から離れようとする。


だがそんな事俺が許さねェ。

ガッチリと名前の腰を掴んで、もうひとつ近くに抱き寄せた。


『え、ちょっと…!』

「キッチリ最後まで"お礼"してくれよ?」

『っ!』

「ほら、早くしてこいよ。」

『って違う違う!お礼になる訳ないってそういう意味じゃないからぁぁああ!離して下さいお願いします!』

「うるせェ、黙ってろ。」

『んぅっ!』



嫌だって言ったって絶対離してやんねェから。















10マンHit御礼リクエスト企画!
赤坂朧様リクエスト!^▽^

リクエストの高杉さん視点です^▽^ご希望通りになれましたでしょうか…?(゚▽゚;)
高杉さんとケーキって合わないですよね^▽^高杉さんの買ったケーキが主人公ちゃんが到底手の出せない値段のケーキだといい^▽^笑
修正、削除などありましたらジャンジャンお申し付けくださいませ!
リクエスト本当にありがとうございました!^▽^


 
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