1
あぁ、ふらふらする。
坂田さんの家にお邪魔した次の日、私は一人で近所の薬屋に向かっていた。
看護師として情けないことに、どうやら私は風邪を引いたようだ。
頭痛が酷いやら身体がだるいやらで現在結構な痛手をおっている。
病院に行けば早いんだろうけど、なにせ今日は非番の日なのでわざわざ病院に行くのは億劫だ。
っていうか看護師が風邪ひいただなんて情けないことを知られたくないだけなんだけど。
……昨日坂田さんといて顔が熱かったのも絶対に風邪のせいだったんだよ、うん。
『薬、薬…。』
店頭に並ぶ風邪薬を1つとって見比べてみる。
………。
しかし思った以上の熱のようで、風邪薬1つ選ぶにも時間がかかってしまう。
立っていることすら辛いうえに、足を動かすのさえしんどい。
「名前?」
あぁ、なんでこういう時に限って会ってしまうんだろうか。
声をかけられて振り返れば、そこには怪訝そうな顔をした坂田さんがいた。
『こ、こんにちは。』
本当は挨拶なんてしてる場合じゃないんだけど。
「何?風邪?」
どうやら坂田さんは私の手に取っている箱を見たようだ。
確かに、風邪なんだけど……
『いや、全然元気です。』
「……。」
『じゃ、さようなら。』
今日だけは誰かの相手をしてる余裕なんてまったくない。
言葉1つ発するのさえ辛いのに坂田さんの悪ノリに付き合っていたら本当にぶっ倒れてしまうだろう。
グイッ
「ちょっと待て。」
『っ!』
早々に立ち去ろうとした時、不意に坂田さんに腕を捕まれた。
踏ん張る力なんて毛頭もない私が倒れ込むようにふらつけば、支えられるように受け止めてくれたのは坂田さんの腕。
「っ!すげェ熱だな。」
『だい、じょぶです、から…』
すいません、と坂田さんから離れようとしたのに坂田さんは私を離してくれない。
あぁ、ヤバイ。
見上げた坂田さんの顔がボヤけて……
「おい!名前!」
そのまま私は倒れ込むように坂田さんの腕の中で意識を失った。
>
戻る