『え?ちょっ…!えぇ?誰の!?』

「もちろん私のヨ!」


……なぁーんだ。神楽ちゃんのか。


胸を撫で下ろしたのは私と新八君。

いきなり何を言い出すかとおもいきや。



「…ダメ、ぜぇーったいダメ!」

「は?」

『ん?』


胸を撫で下ろした私と新八君を余所に、口を挟んだのは坂田さん。




「名前はダメ。俺以外には絶対渡さねェから。」




不覚にも

子供のような言い争いなのに

坂田さんの言葉にときめいてしまった。



「ハッ!ロクデナシの銀ちゃんには魅惑のナースの名前は無理アル!」

「そうですよ銀さん!そんな言葉は真面目に働いてからにして下さい!」

『そ、そうですよ坂田さん!じ、じゃあ私帰りますね!』



神楽ちゃんと新八くんに攻撃されてる間に帰ることにしよう。

なんだか、ドキドキする。

誰も気付かぬうちに玄関から飛び出れば、空には星が輝いていた。

いつの間にか、夜になってたんだなぁ。


万事屋から少し歩けば、後ろから聞こえる誰かの走る音。

振り返れば、そこには坂田さんがいた。


『あれ?どうかしましたか?』

「急にいなくなるから心配したじゃねぇーか。」


一応、帰りますって言ったんだけどなぁ。

まぁあんなに騒いでちゃ聞こえるわけないか。


『す、すいません。』


軽く謝れば坂田さんは安堵のため息をついて私に並んだ。


「送ってくよ。」

『いえ!大丈夫ですよ!』

「だーめ。飯食わして貰ったしお礼って事で。ほら行くよ。」


有無を言わせぬ雰囲気に、そのまま坂田さんの後ろについていく。


『さっきビックリしました。』

「何が?」

『神楽ちゃんですよー。嫁に来い!だなんて私初めてのプロポーズを女の子にされちゃいました!』


ふふ、っと笑えば坂田さんが私に振り返った。


「…次は銀さんの番?」


『もー!何言ってるんで…す、か』


見上げた坂田さんが

逆光でキラキラ輝いていて思わず口をつぐんでしまった。

綺麗、まさにその言葉がピッタリだったから。

坂田さんを見つめたまま、目が離せない。



「…名前ちゃん?」

『………。』

「なぁーに?銀さんに見惚れちゃった?」

『……。』

「…そんなに見つめられちゃ我慢できねェよ。」

『……んぅっ、はっ、』



気付けば、坂田さんに唇を塞がれていて。

苦しい筈なのに、少しだけ気持ち良くて。

坂田さんの着流しを一生懸命に握りしめる、

クラクラ、するっ…!




『……って何するんですか馬鹿ァァァアアア!!』


危ない!!

危うく流されてしまうとこだった!!

恐るべし暗闇の坂田フェロモン。


「なぁーんだ。銀さんの事誘ってんのかと思ったァー。」

『なっ…!そんな訳あるはずないじゃないですかっ!!』


もう!坂田さんなんか知らない!

私は坂田さんを置いていくように一人でズカズカと歩き出した。

あー、恥ずかしい!恥ずかし過ぎる!

尋常じゃないくらいに身体が熱い。



坂田さんに見惚れちゃうなんて



一生の不覚。





闇夜の誘惑


なんだか私

振り回されてばっかりだ!





 


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