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『そういえば入院中の方ですか?』


「うん。あ?いやいや、今日で退院の予定です。」


うん。今日で退院だよ。

つーかなにがなんでも退院したい。



『それはおめでとうございます!』

「いたいた!苗字さん!」


ナースのお祝いの言葉と同時に誰かを呼ぶ声。


目の前のナースが反応した。

つーことは"苗字さん"?


「ちぃちゃんがぐずって苗字さんに会いたいって泣き出したから今すぐ行ってあげてくれる?」


俺の場所からは誰と話してるか彼女が壁になって見えない。


『分かりました!すぐ行きますね!』


もう行くのか。


いや、別に寂しくねェし!




『あ、お兄さん。』

「ん?」

突然振り返ってきたナース。


『これ良かったら差し上げます!』

「え!?良いの!?」



目の前には生クリームプリン。

いや!正直食いてェなとは思ってたけども!!


『はい!!私はもう食べる時間もないし、退院お祝いって事でどうぞっ!』


そういって笑ったナース。

不覚にも何故かその笑顔にときめいた。


それを気付かれないように急いで笑い返す。


「ありがとう。」

『いえいえ!怪我には気をつけてくださいね。無理は禁物です!』



なんだ?どうした俺?


『それじゃあ私は失礼しますっ!』


彼女の笑顔にまだ心臓の動悸が止まらねェ。



これじゃあ中ニの男子レベルじゃねぇかよ!


いやいや!ないから!


惚れちゃったとかないからね!




「坂田さん!!」


「ウゲェッ!!」


走り去る彼女の背中を見つめていれば後ろから聞き覚えのある声。



振り返ればさっきまで追いかけ回してきた婦長。



さっきのナースが会話してたのっておまえかよッ!!


「もう逃がさないですからね!!」


ガシリと捕まれた首根っこ。


ちょ…!俺一応怪我人なんですけどォ!!



「クソババァ!離せェェエ!!」

「うるせェ!もっと怪我させるぞコノヤロォ!!」




そして俺はズルズルと引きずられていった。





銀時、本日脱走失敗。





生クリームプリンと
甘党の看護師


ないでもない出逢いなのに

君の笑顔が

忘れられない







 


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