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私が高杉さんに拾われてからしばらくがたった。
日付感覚なんてもうないけれど窓から見える外の様子が私に時間を知らせた。
私はいつもこの窓の前に座っている。
ただただ外を眺めるばかりだけれど私にはそれで充分だった。
「よォ。またそこにいるのか。」
『…ここが好きなんです。』
高杉さんは毎日ここに来てくれる。
何もない毎日だけれど彼が来るだけで私の時間に少しだけ色がつく。
「……ちょっと来い。」
グイッと私の手を引き高杉さんは来たばかりの玄関に向かった。
『どこに行くんですか?』
「黙ってついて来い。」
そういって部屋から出た。
久しぶりの外はやっぱり家の中とは違くて新鮮な空気だった。
しばらく歩けばヒッソリとした河川敷にたどり着いた。
『…綺麗。』
周りを見渡せば綺麗な桜が咲いていた。
こんな素晴らしい場所なのに人がいない方が不思議だった。
「たまにはこうやって外に出ろ。」
高杉さんは散っていく桜の花びらをつまんで私を見た。
「あんなにじっとしてたら腐っちまうぞ。」
そういって高杉さんは少しだけ笑った。
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