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「お前も



すべてを壊してきたんだな。」





彼はそういって私の手を引いた。















私は遊女として働いている。


金を積まれれば何だってするし相手が望むだけその通りにしている。


その姿勢を気に入られて大金を持ってくる金持ちは沢山いた。




私にはもう、心なんてなかった。












「名前さん、お客様です。」


従業員の声と共に入ってきたのは片目を包帯で巻いている男。


彼は人と違う空気をしていて彼を見た瞬間、きっと彼もなにか背負っているのだろうかと思った。



どこかで見たことあると思い記憶を張り巡らせれば私は彼を指名手配犯だと気付いた。



だけど私はどんなお客様が来ようと深入りするはしない。





深入りしたところでここだけの関係なのだから。





『始めまして。名前と申します。』


そこでお互い初めて視線が絡み合う。


従業員の失礼しましたという声と共に彼は私に向かって歩いてきた。


「よぉ。あんたが今有名な名前か。」


私の顎をクイッと指で持ち上げれば彼は黒い笑顔で笑った。


『…お名前は?』

「高杉だ。」



知っているが一応名前を聞けば本名を教えてくれた。


てっきり偽名を使うかと思ったのに。


「フフッ、俺のこと知ってんだろ?」


そう聞けば彼は私を見つめた。


『存じ上げてます。』


「ならなん」


『ですけど、それ以上は興味がございません。』


そう答えれば彼は少し驚いた顔をした。



「あんた、他の女みたいに媚びねぇんだなぁ。」


『……。』



「気に入った。」




そう言って彼は私の口を塞いだ。











 



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