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私達は桜の木を眺めるように並んで座った。
お互い何も話さずに静かな時間が流れた。
たいぶ時間はたったけれど会話はなくても少しも苦痛ではなかった。
『…此処には良く来るんですか?』
私が聞けば高杉さんはこちらを向いた。
「気が向けば来る程度だ。だけど、此処に連れてきたのはお前が初めてだ。」
そう言って高杉さんは煙草を吸いながら遠くを見つめた。
私は高杉さんを何も知らない。
だからこそ高杉さんを少しだけ知れたようで嬉しいと思った。
こんなの私らしくないのに。
『空が…綺麗ですね。』
空を見上げれば高杉さんが拾ってくれた日に見た茜色の空と同じ空だった。
「そろそろ帰るか。」
高杉さんは私の手を引いて歩きだした。
『高杉さん…今日はありがとうございました。』
握る手に少しだけ力を入れた。
「…気が向いたらまた連れてきてやる。」
また少しだけ笑った高杉さんが私にひとつ、キスをくれた。
見えない心
暇つぶしの為の私に
どうして
優しくするのですか?
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