カシャカシャ、と混ぜるのは白くて甘い生クリーム。


私は今、銀ちゃんの家でケーキを作っている。



世間一般のカップルには、訪れるであろう記念すべき日がある。


所謂、記念日というやつだ。


それが私と銀ちゃんはなんと今日だったりする。


銀ちゃんとはもう何年も一緒にいるんだけど、私は毎年この日を迎えられることが嬉しくて仕方ない。


昨日から楽しみにしていて、だからこそ今日は朝一番にここへ来てこうして銀ちゃんが大好きなケーキを作っている、訳なんだけど。


『銀ちゃん、もうちょっと時間かかっちゃうかも。』

「あっそう。」

『……。』


あっそうって…。

楽しみにしていた私とは正反対に、銀ちゃんはいつもと変わりがない。

むしろ今日はいつもよりも冷たいくらい。

朝からずっと、こんな調子。

私がきてから何時間もたつのにずっとジャンプを読んでるし、今日なんて1度も目を合わせていない。


せっかくの記念日なのに、なんだか少しだけ寂しい気持ちになる。


付き合ってもらうようになってから数年たつが、今だにこんな私で良いのかと不安になってしまう。


銀ちゃんはとても素敵な人だ。

だから、いつかは私なんかでは足下にも及ばないくらい素敵な女性と一緒になってしまうんじゃないかって時々怖くなる。



「手際が悪い。」

『っ!』


気づけばすぐ近くにいた銀ちゃん。

止まっていた私を見て、言ったんだろう。


「その上どんくさいし、」


な、なんで私は急に罵倒されているんだろうか。

ビックリしていれば、銀ちゃんは更に口を開いた。


「朝はすぐに起きられないし、目離すとどっか行っちゃう。」

『……。』

「泣き出すと止まらない。おまけに意地っ張りですぐ拗ねる。」


なんだか、激しく落ち込んできた。

朝から目を合わせないと思っていたら、次にはこれですか。

酷いにも程があるじゃないか。


『銀ちゃ、』

「たまに変なこと言う頭の悪い子だし。」


グサリ、効果音をつけるならこんな感じで今私の胸に突き刺さった言葉のナイフ。

一体、私が何したって言うんだ。

銀ちゃんの機嫌をそこねるような事は、していないはず。


「お菓子ばっかり作るの上手くなって飯は相変わらずだし。」


……それは、銀ちゃんが食べたいって言ってお菓子をたくさん作ってるからじゃないか。


私だって1日も早く銀ちゃんの為にご飯美味しく作れるように、毎日1人で頑張って練習してるんだから。


それをそんな風に言うなんて、あんまりじゃないか。


ジワリ、と瞳に浮かんだ涙を銀ちゃんにバレないように拭った。


今日の銀ちゃん、意味がわからないよ。



大嫌い大嫌い大嫌い、もう銀ちゃんなんて大嫌いだ。



 

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