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『さ、寒い!』
「…まぁなんて言ったって季節は冬だからなァ。」
私と銀ちゃんが息を白くして歩くのは飲みの帰りの寒い道。
大勢で飲んでいた筈だけど、お開きになり帰りの方向が同じと言うところで銀ちゃんと一緒に並んで帰っている。
歩くたびに揺れる、キラキラと輝くのは蛍光灯に反射する小さな雪化粧たち。
私と銀ちゃんが出会ったのはもう小さい頃の話。
普段はどうしようもないくせに、いざと言うときに頼りになるあなたを、気付けば私は大好きになっていたんだ。
だけど私と銀ちゃんは、幼なじみ。
それは誰よりも近い距離にいて、誰よりも遠い場所にいる。
私が想いのすべてを伝えたら、この関係が壊れちゃいそうで伝えられなかった。
そして気付けばもう数年がたとうとしていた。
大事にしたいんだ、どんな形だろうと傍にいれるこの関係を。
と思いつつも、幼なじみ、という括りにも馴れているはずなのに、私は一緒にいるたびに坂田銀時という男にいつも恋い焦がれてしまっている。
そんな気持ちを隠して笑う私は、まるでピエロみたいだ。
『ぶぇっくしょい!』
寒空に誘われて私が思わず吐き出したのは女らしからぬ盛大なくしゃみ。
やば、これじゃあ私ただのオッサンじゃないか。
「お前それでも女かよ。」
『うるっさい!』
予想通りの銀ちゃんからのご指摘。
言われなくても、銀ちゃんの回りの女の人達よりも、自分が女らしくない事なんか分かってるんだから。
できることならばそこには触れて欲しくない所だ。
「そんなんじゃ彼氏なんて夢のまた夢じゃねぇか。」
ニヤニヤと笑う銀ちゃんに、私は頬を膨らませる事しかできない。
うるさいなぁ、もう。
銀ちゃんにこの気持ちがバレたくなくて、私はもうずっと"彼氏がほしい"と、心にも無い事を言い続けている。
今は銀ちゃん以外に好きな人なんていないし、ましてや銀ちゃん以外の人と付き合おうなんて気すらないのに。
『いいよ!ありのままの私を好きになってくれる人を見つけるんだから!』
「そんな都合のいい奴現れる訳ねぇだろ。」
私を見てハッと笑った銀ちゃん。
おい、鼻で笑うなよ。
でも逆を言えば、"女の子らしい"と銀ちゃんの側にいられないでしょう?
みんなと同じ"普通の女の子"になるくらいなら
私は一番傍にいられる"幼なじみ"を選ぶよ。
その為だったら、誰にも気付かれないように、ピエロの様に笑ってるよ。
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