あたしのサンタクロース








『冷えるねーっ、今年のクリスマスは!』

「おー。」


寒さなんかに興味のなさそうな銀ちゃんを尻目に窓際に近付いてガラスに触れれば、さらに指先は冷たくなった。

あっという間に寒くなってて、いつの間にかカレンダーの日付はクリスマスを迎えていた。

そしてあたしの目の前のテーブルにはごちそうとたくさんのお酒がのっている。


「かーっ!やっぱ甘ぇもんツマミに飲む酒はたまんねぇなァ。」

『ケーキとお酒一緒に飲むのって銀ちゃんくらいだよね。そういうとこ昔から変わんないね。』


あたしと銀ちゃんは幼なじみで、こうやってクリスマスというロマンチックな日を一緒に過ごしてるけど、別にあたし達は付き合ってるわけじゃない。

ただ、昔からの習慣みたいなもんで。

小さな頃から誕生日やクリスマス、お正月なんかもずっと一緒に過ごしている。

『ねぇ、』

「あ?」

『あたしで、いいの?』

「何が?」

『こんなロマンチックな日に、一緒にいるのがこんなんで。』


それはこうして大人になっても変わらないことで。

自分では気付いてないみたいだけど、銀ちゃんは昔からモテるから、クリスマスに銀ちゃんと一緒に過ごしたい子なんて他にもたくさんいるに決まってる。

そう考えたら、あたしなんかでいいのかなって。


「お前は?」

『へ?』

「お前は、俺と一緒でいいのか?」


不意に真面目になった銀ちゃんに、目が離せなくなった。


『あたし、は…』


あたしは、昔から銀ちゃんが大好きで大好きで。

それでもずっと伝えられなくて、ずっと"幼なじみ"という特権を利用してた。

本当は、"幼なじみ"なんかじゃなくて"恋人"になりたいと思いはじめたのは遠い昔の話。


『…あたしは銀ちゃんと一緒でいいよ!クリスマスにプレゼントなんてもらったことないけどねーっ!』


ごまかすように笑えば、銀ちゃんは困ったように頭をかいた。


「なら仕方ねぇから、今年は銀サンタがなんかしてやるよ。」

『何、銀サンタって。』

「銀さんサンタじゃなんかおかしいだろうが!略して銀サンタだ。で、何がいい?高価なもんは無理だけど。」

『ほしいもの、かぁ…』


窓際に立つあたしに向かって銀ちゃんが近付いてきて、あたしの目の前に立った。

銀ちゃんがなにかあげるなんて言い出すのはものすごく珍しい。


っていうか、結局あたしの質問は流されてしまった。

再び聞き直すのも馬鹿みたいだから黙っておこう。

きっと、それが銀ちゃんの答えなんだ。


『あるよ。ほしいもの。』

「おっ!何だ?」

『あのね、』


別に良いんだ、銀ちゃんにとってあたしが特別な存在じゃなくても。

銀ちゃんと一緒にいれる、それだけで嬉しいから。


『あのね、メリークリスマスって言って、抱きしめてほしいなぁ、なんて。』


だからクリスマスという今日だけ、わがままを言わせて。


あたしが銀ちゃんに笑えば、銀ちゃんは少しだけ目を見開いて驚いた後、同じように笑ってあたしを抱きしめてくれた。


「メリークリスマス。」

『メリークリスマス、銀ちゃん。』


銀ちゃんの温もりが恋しくて、なんだか泣きそうになった。


好きだよ、大好きだよ。


臆病なあたしは決して言葉には出来ないけど、誰よりも想ってるから。


「…これでいい?」

『うん!ありがと!』

力強く抱きしめてくれたまま上から銀ちゃんの声が降ってくる。

自分で言っておきながらなんだけど、この状況にすごく照れる。


「なぁ、」

『ん?』

「俺にも、プレゼントちょうだい。」


耳元で聞こえる声に、何だか恥ずかしくなってしまう。


『い、いいよ。何がいい?』

甘いものはダメだよ!なんてふざけて答えれば、銀ちゃんは顔を上げて真剣な顔であたしを見た。


「来年のクリスマスも再来年のクリスマスもこれから一生、一緒に過ごすのはお前がいい。」

『……銀、ちゃん?』


「俺、お前が欲しいんだけど。」


照れ臭そうな銀ちゃんに、あたしは何も言えなくて。

信じられないくらいに驚いて、だけどそれ以上にすごく嬉しかった。


『…はい、あたしをもらってください。』


嬉しくて泣きながら答えるあたしに、銀ちゃんは優しくキスを落としてくれた。








夜空に降る粉雪も

街角のイルミネーションも

全部がキレイに見えるのは

となりにあなたがいるから





Happy Merry Christmas!様に提出^▽^
素敵企画に参加させていただきありがとうございました!!


 

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