「坂田先生、ちょっといいですか?」



そろそろ教室に戻ろうと言うとき、ガラリと国語準備室の扉が開いた。


そこに現れたのは、普段は国語準備室に来ることなんかない先生。


「なんですかー?」


「重要な話、なんですけど。」


その先生はなんだか深刻な顔をして、銀ちゃんを見た。


『……じゃあ、先に戻ってるね。』


なんだか大事な話のようだしここに無関係の私がいるのも気まずいから先に戻っていよう。


声をかけた私に、銀ちゃんもダルそうに返事をした。
















それから数十分。


「それじゃ授業始めまーす。」

銀ちゃんが教室に戻ってきたのは授業が始まってからだいぶ遅れてからだった。


そんなに重要な話だったんだろうか。


戻ってきた銀ちゃんも、心なしか不機嫌なようにも見える。

いつものわいわいとした授業とは真逆で、淡々と進んでいく授業にみんなも戸惑いが隠せないようで。


「銀ちゃん、なんかおかしいネ。」


隣の神楽ちゃんも、不安そうな顔。


……本当に、銀ちゃんどうしたんだろう。


そしてそのまま授業が終わり、誰とも目を合わせずに教室を出ていった銀ちゃん。



そして結局、この後もお昼休みも放課後もタイミングが合わずに1日銀ちゃんと話すことができなかった。





翌日、私は何時ものように朝早く国語準備室に向かった。


わたしの手には銀ちゃんのお気に入りのいちご牛乳が1つ。


銀ちゃん、これで機嫌直してくれたらいいんだけど……。


ってなんで機嫌が悪いかもわからないけどね。


ハァ、と大きな深呼吸をした時、ガラリと扉が開いた。


『銀ちゃん!おはよう!』


「……。」


そう声をかけて振り返ったんだけど、銀ちゃんは昨日と同じ暗い顔のまま。


『…銀ちゃん?』


本当に、昨日からどうしちゃったんだろう。


いつもだったら朝顔を会わせたら笑ってくれて、優しくキスをくれる、のに。


『なんか、あった?どうしたの?』


「別に、なんもねェよ。」


なにもないって……、


絶対嘘だよ。


だって銀ちゃん、何もないのにそんな態度とるような人じゃないもん。


私は離れていた銀ちゃんにグッと距離をつめた。


 

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