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銀ちゃん
私は銀ちゃんが大好きで
だから、銀ちゃんの迷惑になることが1番嫌なんだよ。
朝の国語準備室。
窓から外を見ればちらほらと登校している生徒の姿。
受験が近いからか参考書を手に歩く真面目な生徒とか、はたまたダルそうに歩く生徒とか。
この国語準備室から見える景色は、今日も変わらない。
「名前。」
『銀ちゃん!』
私の後ろに現れたのは、3Zの担任の坂田先生。
「おはよ。」
そして、おでこに触れるくらいの小さなキスをくれた、私の大好きな彼氏です。
銀ちゃんは私を後ろから抱き締めて、同じように窓の外を見た。
「あいつら"必死ですー"、って感じだな。」
『そりゃ受験だからねぇ。』
「っていう名前ちゃんは随分余裕そうじゃんよ。」
『まぁ、私は推薦で決まってますからね。』
お受験ムードに染まるこの時期、有難い事に私は推薦という素晴らしいモノのお陰で希望の進路に行けそうだったりする。
『これも坂田センセーのお陰です。』
「なぁに言ってんの、普段からお前は頑張ってただろ。」
『銀ちゃんがいてくれたから、頑張れたの。』
「……本当、名前ちゃんは良い子だねー。」
そう言って私の頭をくしゃっと撫でてくれた銀ちゃん。
だって本当に、この高校生活頑張れたのは銀ちゃんのお陰なんだもん。
「あぁそうだ、名前。」
『ん?』
私の頭に手をのせたまま、何かを思い出したように口を開いた。
「卒業旅行、行きませんか?」
『卒業、旅行…?』
「さすがに今すぐにって訳にはいかねェけどさ、卒業したらお前と行きたいんだけど。」
『わ、私も行きたい!』
"教師"と"生徒"という間柄、銀ちゃんとは旅行どころかデートさえできていなかった。
そんな中、まさかの旅行のお誘いだなんて嬉しすぎる。
「卒業したら、ちゃんと名前を"俺の彼女"って胸はって自慢してやる。」
そう言ってニヤリと笑った銀ちゃんは私の頭を再度なでて、真っ直ぐに私を見た。
もう、一体なんなの。
なんで今日はこんなに嬉しいことばっかり言ってくれるんだろう。
ギュッと抱きつけば、銀ちゃんも抱き締め返してくれる。
『銀ちゃん、』
「ん?」
『大好き。』
こんなに私の事を考えてくれる銀ちゃんが、本当に大好き。
「うん、俺も。」
ニッと笑った銀ちゃんに、私も笑った。
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